キャリアとは
最近、「キャリア」 という言葉を頻繁に見聞きするようになりました。キャリア形成、キャリア開発、キャリアパス、キャリア採用 ・・・
一体キャリアとは何なのでしょう。英語の「career」 は「経歴」「履歴」 といった意味ですが、これはどの会社へ入り、どんな部署に配属され、何をしてきたか、という履歴書や職務経歴書に書けるものであり、「客観的キャリア」
とよばれています
これに対し、
- 自分は何をしてきて、その結果、どんな事に興味や関心があるのか
- 自らの譲れない価値観とは何か
- どんな能力・スキルを身につけてきたのか
これらは「キャリアの3要素」 とよばれ、これらで構成されるのが「主観的キャリア」 です
つまり、キャリアとは長期的な視点から見た自分自身の仕事生活のパターンと、そこから得られた自己理解といえます。馬車が通った後にできる轍(わだち)のようなもので、その人の歩んできた道のりがわかり、特徴やクセが見て取れます
また、キャリアは過去だけでなく、将来へ伸びる道でもあります。私はなぜ働くのか、仕事をする意味とは何か、自分の仕事と生活をどのように関わらせるのか、これらに対する答えとも言えます
キャリアの開発とは
これまで会社勤めの人は自らキャリアを考える必要はありませんでした。終身雇用と年功序列賃金の下で、キャリアは会社が用意してくれたからです
しかし、終身雇用は消滅し、若い社員ほどキャリアは会社任せではなく、自分で開発していく必要があり、自らが生き残るためにキャリアの開発が重要だと認識しています
自分の生活設計を会社に委ねるのではなく、自分らしく生きたい、やりがいのある仕事をしたい、専門的な技術・スキルを身につけたい、と考えています。では、自分らしさとは何か、自分は何をしたいのか、何ができるのか、これがキャリアを見つめ直すことです
一方企業は、これまでとは違う人材を必要としています。それは、たとえば、新しい発想で事業を創造・革新できる人、専門的な知識・技能をもった人、失敗を恐れず挑戦する人、変化対応力に優れ、問題解決能力の高い人、などです
企業と個人の間で、その目的や方向性がズレたまま、いくら人材育成の投資をしても効果は期待できません。これまでの教育研修やOJTは、あくまで会社が、いま必要としている内容であり、それは一人ひとりの社員にふさわしいものとは限らず、また将来必要なものであると断言することもできません
企業は社員を主役に据え、彼らが自発的に成長することを促す方策を取り入れる必要があります。それが「キャリア開発支援」 です
「そんなことをしたら社員が辞めていくだけだ」「企業にとって役に立たないような人材を育成してなんの意味があるのか」、という経営者、人事担当者の方もおられます
しかし、若年の労働人口が減少し続ける状況では、過去のような人材育成の手法だけでは企業が必要とする人材の採用、確保、慰留はできなくなってきました。いくら給料や賞与をはずんでも、意欲、士気、モチベーションは上がらず、できる人材ほど自らが成長できる場・機会を求めて退職してしまう事態が生じています
キャリアの開発支援を通じて、「企業の経営理念、方針、ビジョン」 と「社員の夢、生き甲斐、目標」 を幅広く、高い次元で、長期間にわたって一致させること、そして、企業と社員が価値観を共有し、連帯感を高め、二人三脚でともに成長をできる仕組みを作ることが必要です
これにより人材や組織が活性化していきます。企業にとってキャリア開発支援は、避けて通ることができない人事上の課題になってきた、と言えそうです
具体的な方法
企業が行うキャリア開発というと、異動配置、社内公募制、自己申告制度など人事制度の仕組みが取り上げられることが多いようです。しかし、それよりも社員の自己理解・自己分析が欠かせません。そのための具体的な手法としては、次のようなものがあります
- 自らの職業生活を振り返り、これからどうするか、どうあるべきかを考える機会・きっかけ(=職業生活設計)を提供する
- 適切に職業生活設計を立てられるように、また効果的に職業能力の開発・向上ができるように相談体制を整える(=キャリア・カウンセリング)
- 職業生活設計を立てるに当たって自分の職業能力の開発・向上の目標を適切に立てられるように情報を提供する。情報の内容としては @職務内容及びその遂行に必要な職業能力 A配置方針とその運用状況 B人材育成の基本方針とそれに基づいて実施する教育、研修、職業能力検定、などが挙げられます
- 雇用管理全体を社員の職業能力の開発・向上を促すものにする
1.の「職業生活設計を提供する」、は抽象的でわかりにくいかもしれません。これは通常ワークショップと称される参加型の研修の場で、次のように進行します
まず「自己分析」 として、学生時代から現在までの歩みを振り返ります。職業人としての自分とプラベートの自分を見つめ直します
職業人としての面では、これまでの職務内容、実績、スキル・専門知識などを整理していきます。プライベート面では趣味・特技、強み・弱み、価値観、資格・免許、人脈をリストアップすることで、自らを客観的にとらえます
次に自分を取り巻く「環境の分析」 を行います。仕事面における分析と、プライベート、地域社会やコミュニティとの関係における分析も行います。日常における時間管理を整理してみることで、日頃の行動を分析することもあります
こうした「自己分析」 と「環境分析」 を踏まえて、2年〜5年先のビジョンを描き、そのビジョンを達成するために必要な課題を形成していきます。最後に形成された課題を実現していくための1年間の計画を立案します
このようにして、自分と仕事の両面からこれまでの生き方を振り返り、今後自分は仕事とどのように関わっていくのか、仕事と生活をどのように折り合わせていくのかを考える機会を提供します
このことにより、職業生活設計における主役は自分自身であることが認識され、自らが主体的に仕事と関わる意識やスタンスが生み出され、内発的な動機づけが喚起されます
このように、企業にとってキャリア開発支援は人事制度上、重要な役割を担いつつあります
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