人事考課の種類



1.能力考課


一般的には職能資格制度と併せて運用され、社員の保有する知識・熟練度、能力などを査定します

職務を遂行していく上で必要な能力が考課要素としてリストアップされます

たとえば、
  • 判断力
  • 指導力
  • 折衝力
  • 知識
  • 企画力
  • 理解力
  • 計画性
  • チームワーク

そして、これらの項目一つ一つにその具体的内容が定義づけされる必要があります

なぜなら、わが社にとっての「○○力」とは、どういったものなのかについて、評価する側、評価される側、双方が共通の認識を持たなければならないからです

それがなければ、両者の間に考課要素を巡ってズレが生じることになります

こうした定義がなされていない場合、人事考課は実施しているが、形式にとどまり、実質は行っていないのと同じ状態に陥ります

以下はある会社の人事考課表です。この会社は評定要素の意味について、何も定められていませんでした


項目

評定要素

本人

一次

二次

成績

仕事の量

仕事の質

創意・工夫

目標の達成

指導・育成

成績総合

執務態度

規律性

責任性

協調性

積極性

勤務態度

情意総合

能力

知識

判断力

企画力

折衝力

指導力

能力総合

業務遂行力

業務遂行技能力

総 合 評 定


S:きわめて高い水準 A:期待水準を上回っている B:期待水準に達している
C:期待水準以下である D:きわめて劣っている  

この会社の人事考課は、考課者の主観、印象による評価となるか、ほとんど全員がB(普通評価)となるでしょう

あなたの会社では、評定要素の言葉の意味・内容が示されないまま、人事考課を行っていませんか



欠かせないメンテナンス

考課項目としてどういった要素を採用するか、というメンテナンスだけでなく、項目の定義もメンテナンスする必要があります

環境の変化に応じて考課要素のもつ意味、内容を更新しなければ、実態に即した能力考課はできません。これがなされていないと、人事考課をしても、社員のモチベーションは上がりません

「上司は何もわかっちゃいない」、「会社は現場の実態を知らない」、こうした社員の思いや発言は、現場の実態からかけ離れた能力考課が行われている結果といえます



能力考課の問題点

能力評価の特徴は社員の持つ能力、つまり潜在能力を評価することにあります。能力は持っていれば、それだけで評価されるのです。能力が発揮されたか否かまでは問われません

そして経験を積むごとに能力は高まり、一度身に付けた能力は衰えることはない、という大前提があります

この経験を積むことが、年齢を重ねることと同一視され、多くの企業で、能力考課が年功による評価、つまり年功序列化してしまっています。この点が能力考課の問題点の一つです

環境変化の早い時代に能力、スキルは急速に陳腐化します。かつて、営業担当者は自社製品・サービスを相手に購入させることが能力とされていました。しかし、現在は顧客の問題解決を提案する能力 (ソリューション) が求められています

かつての営業スタイルしか経験のない社員、これまでの営業手法を変えようとしない社員、彼らが経験を積んで、能力が高まったと評価するのは実態に合わなくなっています



問題の原因とは

このように環境や時代の変化とともに求められる能力の質は変化し、その低下もありえるのですが、能力考課の前提はそうなっていません

その原因は、能力考課が賃金と密接に連動するようになっているためです。マイナスの考課は賃金ダウンとなってしまうため、能力が低下したという評価を下しにくいのです

また、潜在能力を評価するため、評価する人間の主観、印象、推定が入り込む余地が大きいといえます。考課者には人を見極める 「眼力」 が要求されます

ところが企業はここ数年のリストラで、こうした眼力を持ったベテラン社員を整理してきました。あなたの会社には 「人を見る眼」 を持った管理職が残っていますか

このように能力考課は、ますますその機能を果たしづらくなってきています

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2.情意考課


社員の勤怠状況、業務への取り組み姿勢、やる気などを査定します

代表的な考課要素としては

  • 規律性
  • 積極性
  • 協調性
  • 改善努力
  • 自己管理
  • チャレンジ意欲
  • 責任性

などがあります

これらの項目についても、その内容について定義づけを行う必要があります

情意考課は入社間もない社員、若手社員の評価に積極的に活用されます。社会人として仕事を遂行していく上での必要最低限のマナーやルール、仕事への取り組み姿勢を評価の対象としているからです

上位の資格に昇進・昇格するにつれ情意考課の評価のウェートは減少します。入社して10年も経って「規律性」 などが問題になるような社員はありえないし、あってはならない、という考え方です




3.業績考課


仕事の質と量、与えられた仕事の成果、課題、目標の達成度をもとに査定するものです。これは成果主義制度と表裏一体の関係にあります

目標に対しての達成率、前年対比率、利益向上率、経費削減率など、数字によって評価を行うものです。多くは目標管理制度とともに運用されます

管理職以上は能力考課、情意考課を用いず、業績考課だけで人事考課を行う場合も多々あります

管理職は、潜在能力とか仕事への取り組み姿勢で評価するのではなく、任された部門の業績だけを評価の対象とする、結果がすべてであり、どれだけ企業に貢献したのか、それが考課のすべて、とする考え方です



数字で測れない仕事

業績考課は目標の達成度合いを評価の基本とするため、目標が数字で示される職務には導入しやすいといえます。営業、工場など具体的な数字で善し悪しを判断できる職種です

しかし、仕事の「質」を問う職務については運用が困難になります。企画、調査、研究、開発、保守、マーケティング、デザイナー、システムエンジニア ・・・
こういった職務を数字で評価することはできません

これとは逆に顧客は、数字で評価できない仕事によって生み出される新しい価値、ユニークな提案、斬新な切り口、他社にない特徴に対して、より高い評価を与えるようになってきました



さらなる混乱

本来数字で評価できない職務に、無理やり業績評価を導入している企業も多いのです。 実態にそぐわない数字で人事考課を行うと、モチベーションは下がり、現場はしらけてしまいます

こうした弊害を解消しようとして、結果だけで業績考課をするのではなく、途中経過も評価の対象としようとするプロセス評価の動きもあります

しかし、結果が伴っていなくても、業績考課においてプラスの評価をすると、能力考課との違いが曖昧となり、業績考課本来の趣旨から外れることになります

これを避けるため、今度はプロセス評価と能力考課の違いを明確にしようとする、こうした混乱が人事考課全般への不信を招き、目標管理制度、成果主義賃金制度の評判を落としています

結果として、業績考課の最大の狙いである正当な評価で社員の貢献に応える、という目的は達成できず、社員のモチベーションも向上しない事態となっています




4.コンピテンシー


コンピテンシー
とは、高い業績や成果を上げた人に共通する感性、安定的に発揮されている行動特性のことをいいます

アメリカ政府機関における研究から、業績と学歴や知能との関係性は薄く、業績の高い人達にはある種共通したコンピテンシーがあることが明らかになりました

それならば企業においても、高業績を上げる人達の行動を分析し、共通する特性を明らかにし、これを人事制度に応用しようとする動きが始まります。1990年頃です

その数年後、日本ではバブル経済が崩壊し、多くの企業は成果主義賃金制度の導入に踏み切るのですが、従来の職能資格制度は廃止せず、両制度を併用しています

職能資格制度では、社員の潜在的な能力を評価するため、客観性に欠けるという問題がつきまといます。「部下が保有しているであろう革新性という能力のレベルは?」 と言われても、客観的な評価ができないのです

潜在的な能力の程度を評価するには、人物を見極める眼力が要求されます。しかし、企業はリストラによって眼力を備えたベテランを排してきました


採用が進むコンピテンシー

そんなとき、アメリカからコンピテンシーという考えがやって来ました。企業は職能資格制度に代わるものとしてこれに飛びつき、コンピテンシーによる評価制度の導入が始まります

具体的には、自社における成績優秀者の行動特性を分析、抽出し、コンピテンシー・ディクショナリーを作成します。人事考課の表現は、職能資格制度における評価 「○○することができる」 から、コンピテンシーによる評価 「○○している」 と改められます

これなら、ラインの管理者でも容易に評価が行えるようになる、また、採用や配置転換、能力開発の方向を見極めるのにも活用できる、というわけでコンピテンシーによる人事考課は普及しつつあります


注意する点とは

一見素晴らしそうなコンピテンシーですが、弱点もあります。コンピテンシーによる人事考課では、自社における高業績者の行動特性を用いるのですが、中小企業では、自社の高業績者のレベルが世の中の高業績者に該当しない場合も多いのです

こうした場合は、市販されているコンピテンシー・ディクショナリーを買い求め、そこで明らかにされているコンピテンシーの項目について、社内研修で話し合ってみるとよいでしょう

そこには自社には存在しない行動特性が明記されています。すでに発揮されていると思われる行動特性であっても、現状を超える質的レベル、奥行きの深さについて検討してみる、そこから業務の進め方の新しい視点が開けてきます

コンピテンシーの具体的な内容を見たい、という方は、無料ツールのページで、コンピテンシー基準書 をご案内しています



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