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社員をやる気にさせるには、自らの動機や欲求が満たされること、すなわち内発的動機が高まることが必要です (内発的動機づけについては、こちら)
この内発的動機を高揚させる要素のひとつに成長感があります。社員自らが「成長できる」 と期待感をもてること、成功体験を積み重ね成長実感を抱かせる環境、これらがワークモチベーションを向上させます。社員を成長させるという人材の育成の取り組みが、モチベーションをアップさせるのです
企業が行う人材育成の仕組みとしては次の3つがあります
- OJT
- OFF−JT
- 自己啓発
これまで人材育成の仕組みの中心は OJT でした。ところが最近、企業の現場からはOJTが上手くいかないという声をよく耳にします
その理由は、次の3つがあります
- 理由 その1
- 状況の変化に機敏に対応するため組織階層のフラット化が進んでいます。また、プロジェクト単位で職務を遂行するというケースが増え、職場の上下関係の希薄化も進んでいます。このため、上司が部下を指導しながら業務を遂行するという機会が減っています
- 理由 その2
- 長期雇用や終身雇用が終焉を迎え、非正規の労働者が増え雇用は流動化しています。このため、上司や管理職は部下を育成するという使命感・責任感が薄れ、部下も育てられることを期待しなくなっています
- 理由 その3
- スキルやノウハウが急速に陳腐化するため、上司がかつて身につけたものは役に立たなくなっています。そして、現場で通用する最新のスキルやノウハウを上司が学ぶ機会は少なく、仮に学んでも実践で磨かれることがないため、やはり教えることができません
OJTで人材が育成できた背景には
- スキルやノウハウは経験によって蓄積し、高めることができた
- 強固で明確な上下関係の存在
- 部門を中心にした業務遂行
- 長期間に渡る雇用関係
これらが揃ってこそOJTは機能しました
また、OJTという仕組み以外にも企業が人材を育成できなくなった原因があります
人を育てる、成長させるには、仕事のプロセスである「計画→企画→手法・実行→検証・改善」 という各段階において、社員の自律的な判断や行動が伴っていることが必要です
高度経済成長の時代の日本企業では特段の配慮をすることなく、これが実現されていました。企業の成長につれ部門は増設され人員は増え、社内ではたえず新規事業の計画があり、新しい仕事が舞い込み、前例のない技術革新がありました
誰も経験したことのない新規性の仕事は、主に若手社員たちに委ねられました。社内や部門は慢性的な人手不足で、新規の案件は若手がやらざるを得ませんでした。彼らは半ば強制的に新しい未知の仕事を任されるというプロセスを経て、経験を積み、フィードバックを受けることで、仕事に対する自己認識が形成されていったのです
ここでの自己認識とは、自分は何が得意で、何が不得手なのかという能力を理解することであり、何をやりたいのかという欲求、動機を認知することです。自分が何をしているときに一番充足感を感じるか、意味があると感じるのか、という価値観を形成し、それを認識することです
これが仕事に対する自らのスタンスを理解させ、キャリアを開発させ、人材育成につながっていきました。企業は人材育成を意識しなくても自然に人材が育成されるようになっていたのです。しかし、現在ではこうした状況は見られなくなりました
社会や企業の成長が鈍化し、若手社員が新規案件に関わる機会が少なくなっています。その上、社員構成のピラミッドは中間がふくらんだビヤ樽型になり、新規プロジェクトは若手にまわってこなくなりました。企業は目先の効率を優先させ、リスクに敏感になり、新しい仕事は経験豊富なベテランに任せる傾向にあります
(新規の仕事は年功が成功を約束しているわけではないのですが ・・・)
自律的なキャリア開発
こうした状況を踏まえ、企業が人材を育成するためには「自律的なキャリアの開発」 を支援することです。これまでは終身雇用制度があったため社員は自分のキャリアは会社に任せておけば心配ありませんでした
しかし、終身雇用制度が崩壊し、雇用が流動化しつつある中で、今後は自らのキャリアは自分で開発していくことが求められます。そして、企業はそれを支援する側に回ることになります
キャリア開発というと他社でも通じるような資格、実務経験、職種名を得ることだ、と思っている人がいます。そうではなく、キャリア開発とは、仕事を通じて自らがどうありたいのか、どういう状態で仕事に望みたいのか、それを見つけることや認識することです (キャリア開発の詳細については、こちら)
そのためには、主体的に仕事に立ち向かう意識を持ち、常に仕事において自分なりの見解を持っている必要があります。それは、以下のようなことを踏まえながら、出来る範囲内で自分なりに仕事を作り変えていくことです
- 仕事の範囲や奥行きが持つ多様性
- 自らが計画を立て、方法を決める自律性
- 自分なりの仕事の意味づけ
- 仕事から得たフィードバックという情報
「自律的なキャリア開発」という言葉は知らなくても、その本質を知っている社員には、次のような行動が見られます
- 仕事に対して自分の意見、方針、価値観をもって取り組んでいる
- 仕事を取り巻く環境、動向の変化、方向性を自分なりに理解、認識している
- 自分の所属する部門・チーム以外のメンバーや、社外の関係者などを巻き込み、ネットワークを活用して仕事をしている
- 仕事の取り組み、企画立案において自分なりの考え、発想をもっている
- 自分の満足感が高まるように、あるいは自分の価値観に沿うように、仕事の取り組み方に工夫を凝らしている
自律的なキャリア開発の意味や重要性を教えることで、こうした行動を自発的に取ることができるようになります。これが社員に成長感を味あわせ、モチベーションを向上させることになります
スキルを伝達すること、知識を教えることだけでは、人材育成は図れなくなりつつあります。社員が上記に示したような行動を取れるようになるための環境や仕組みを考えることが必要です。そのためには、次の3つがあります
- 仕事の再編を進めること
- キャリアパスを構築すること
- 多様性を容認すること
1.仕事の再編を進める
人材育成を取り巻く状況を打破し、人材を育成するには、仕事を再編し、かつての高度経済成長時期と同じような状況を意図的に作り出すことが必要です
企業が成長すると、顧客・製品・サービスが変わり、仕事の流れ、要求される仕様内容、期待される内容が変わっていきます。外部との関係に変化が生じ、組織が変わっていきます
企業が変化を望んでいなくても環境が変化し、対応を迫られ、変化を生じている場合もあります。変化の事例を挙げてみましょう
- 新しい市場への参入
- 新しい分野での製品開発
- サービス内容の抜本的な見直し
- 販売・仕入・購買ルートの開拓
- 営業・サービス地域の多様化
- 営業手法・製造工程の見直し
- 組織やチームの新設、分割
- 組織の消滅、統廃合、再編成
- 他社との業務提携
こうした変化に伴い生じる新しい業務プロセスの経験者は社内に誰もいませんし、前例もありません。人材を育て、モチベーションを高めるには、こうした新規の業務プロセスを若手に委ねることです。彼らに許容できる範囲内で権限を与え、期待する役割を示し、自らで課題を見つけさせ、目標を設定させます。身体的・精神的限度内で負荷をかけ、あえて試行錯誤をさせ、フィードバックを与えることです
こうした経験を通じて自らの能力を知り、価値観を理解し、成長感が得られます。効率は悪く、リスクは高いかもしれませんが、それが人材育成につながります。これがOJTに代わる新しい教育訓練です
新しい業務プロセスを若手社員に委ねることで、責任や期待が課せられます。企業の成長に貢献する自らの役割や使命を理解できるようになります。新しく課せられた責任を果たしていくこと、期待に応えることで、自らの成長を感じることができます。企業の掲げるビジョンに貢献できることや、企業の成長に合わせ自分も成長できることでモチベーションが向上します
人材を育成するためには、企業自身の成長も欠かせません。企業が成長することで人材が育ち、その育った人材が企業の成長に貢献する、こうしたサイクルが繰り返されます。企業の成長と人材の育成は相互補完的な関係にあります
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