目次
企業が発展、成長するためのビジョン、戦略があっても、社員がそれらを消化し、自ら成長すること、つまり人材育成が進まないと、机上の空論で終わります
トップがハッパをかけても、組織が一向に活性化しない原因はここにあります
社員をやる気にさせるには、自らの動機や欲求が満たされること、すなわち内発的動機が喚起されることが必要です (内発的動機づけについては、こちら)
この内発的動機を構成する要素のひとつが「成長」 です。社員自らが「成長できる」 と実感をもてること、成長の期待を抱かせる環境がワークモチベーションを向上させます
人が育つ仕組みが、モチベーションをアップさせます
働く人の動機や欲求は、仕事を通じてしか認識されません
成長というと他社でも通じるような資格、実務経験、職種名を得ることと考え、それがキャリア開発だ、と思っている人がいます
企業側も、知識やスキルを学ばせることが人材育成だ、と考えている場合もあります。しかし、これは間違っているのではないでしょうか
キャリア開発とは、仕事を通じて自らがどうありたいのか、どういう状態で仕事に望みたいのか、それを見つけること、認識することです (キャリア開発については、こちら)
そのためには、自らが主体的に仕事に立ち向かう意識を持ち、そして、常に仕事において自分なりの見解を持っていないとわかりません。これを主体的ジョブデザイン行動と呼んでいます
ジョブデザインとは
近代工業化社会による単純労働は、人間性を喪失させ、人間疎外という現象を生みました。この反省に立ち、ロボットのような労働から人間を解放し、個性や自己実現の欲求を満たすものに仕事を作り変えようという「労働の人間化」 「QWL(Qualtiy of Working Life)」が主張されます。この理念の実現に向けての手法の一つが主体的ジョブデザインです
ジョブデザインとは
- 仕事の範囲や奥行きが持つ多様性
- 働く人が自らで計画や方法を決める自律性
- 仕事全体を見通し自分の仕事の意味を理解するタスク・アイデンティティ
- 仕事から有意義な情報を得るフィードバック
これらの要素を組み合わせながら、自分で仕事を作り変えていくことです
ジョブデザインという言葉は知らなくても、その本質を知っている社員には、次のような行動が見られます
- 仕事に対して自分の見解、方針、価値観をもって取り組んでいる
- 仕事を取り巻く環境、動向の変化、方向性を自分なりに理解、認識している
- 自分の所属する部門・チームを超えたメンバーとのネットワーク、取引先のような他社のメンバーを巻き込んで仕事をしている
- 仕事の取り組み、企画立案において自分なりの考え、発想をもっている
- 自分の満足感が高まるように、自分の価値観に沿うように仕事の取り組み方に工夫をしている
これはキャリアを開発する上での優れた行動、「キャリアコンピテンシー」(※)と言えそうです
※コンピテンシーとは、高い業績・成果を上げた人たちに共通する感性、特有の思考、行動様式のこと
主体的ジョブデザインの意味を教えること、理解させることで、こうした行動様式を自発的に取ることができるようになります。それが自律的な人材であり、人材育成の今日的テーマです
スキルを伝達すること、知識を教えることだけでは、人材育成は図れなくなりつつあります。社員がこうした行動を取れるようになるための仕組み作りを考えることが必要です
具体的には
これらを行うことで人材が育成され、組織が活性化されます。それぞれ詳しく見ていく前に人材育成が進まない理由を考えてみます
日本の企業で人材育成の仕組みの代表例はOJTでした。ところが最近では、このOJTが上手くいきません
その理由は、次の2つです
理由 その1
- スキルの陳腐化が著しく、上司がかつて身につけたスキルは役に立たなくなっています。そして、現場で通用するスキルを上司が学ぶ機会は少ないのが現実です。仮に学んでも実践で磨かれるチャンスがないから、やはり教えることはできません
理由 その2
- 組織のフラット化、上下関係の希薄化が進行中です。チームでの職務遂行という形態が増え、メンバーは多彩な顔ぶれで構成されます。他部門、非正社員、契約社員、関連会社のメンバー、外部の関係者、このような多様なネットワークによる業務遂行が主流となり、上司が部下を指導しながら業務を遂行する場が減っています
OJTで人材が育成できた背景には
- スキルは経験によって高めることができた
- 明確な上下関係の存在
- 業務遂行は部内・課内中心
これらが揃ってこそOJTは機能しました
かつての人材育成とは
人を育てる、成長させるには、仕事のプロセスの「計画→企画→手法・実行→検証・改善」 という流れの各段階において、社員の自律的な思考や行動が伴っていることが必要です
高度経済成長の時代は、企業にこの仕組みがありました。企業の成長につれ人員は増え、部門は新設されました。社内では、たえず新規の計画があり、新分野への進出が予定され、前例のない技術革新がありました
それは誰も経験したことのない仕事であり、主に若手社員に委ねられました。社内や部門は慢性的な人手不足で、経験・実績のある中堅は進行中の案件で手一杯。新規案件は若手がやらざるを得ませんでした
今はもう見られない
若手社員は、強制的に新規案件を任されるというプロセスを経て、経験を積み、フィードバックを受けることで、仕事に対する自己認識が形成されていったのです
ここでの自己認識とは、自分は何が得意で、何が不得手なのかという能力を理解することであり、何をやりたいのかという欲求、動機を認知することです。自分が何をしているときに一番充足感を感じるか、意味があると感じるのか、という価値観を形成し、それを認識することです
これが仕事に対する自分のスタンスを理解させ、キャリアを開発させ、人材育成につながっていきました。今こうした特徴は影を潜めました。社会全体や企業の成長のスピードが低下し、新規案件に関わる機会そのものが少なくなりました
また社員構成は中間がふくらんだビヤ樽型になり、新規プロジェクトは若手にまわってこなくなりました。リスクに敏感な企業は、経験豊富なベテランに任せる傾向が強くあります
こうした状況を打破し、人材育成を図るには、かつてと同じ状況を意図的に作り出すことが必要です。実は、これは経営戦略上の必要性から生じてきます
企業が成長していくと、顧客・製品・サービスが変わり、仕事の流れ、要求される内容、期待される中味が変わっていきます。外部との関係に変化が生じ、組織が変わっていきます。企業が変化を望んでいなくても環境が変化し、対応を迫られ、変化を生じている場合もあります
新しい業務プロセスの経験者は社内にいませんし、前例もありません。次のリーダーを育てるには、こうしたプロセスを若手主導で進めること、彼らに負荷をかけ、フィードバックを与え、試行錯誤させることです
この経験を通じて自らの能力を知り、価値観を理解し、成長感が得られるのです。リスクは高いかもしれませんが、それが人材育成につながります。これがOJTに代わる新しい教育訓練です
モチベーション向上と企業の成長
組織が成長を続けると、新しい業務プロセスが生まれ、社員にも新しい責任、期待が課せられます。企業の成長に貢献する自らの役割、使命を理解できるようになります
新しい責任を果たしていくこと、期待に応えることで、自らの成長を感じることができます
ワークモチベーション向上に必要とされるのは、企業の掲げるビジョンに貢献できることであり、企業の成長に合わせ自分も成長できる環境です
そこでは期待される役割が示されます。あるいは自らの考えで課題を見つけ、目標を設定し、それが承認されます
プロセスはフィードバックを受け、成長を実感でき、貢献には賞賛が与えられます。人材育成のためには、企業の成長が欠かせません
|