リーダーシップ理論と実践




リーダーシップの研究は、20世紀の前半、優れたリーダーの特質を個人の中に見出すことから始まります。清廉潔白、公正性、思いやり ・・・   こうした多くの要因が挙げられました

しかし、優れたリーダーに普遍的な特質を見つけ出し、定義・裏づけすることは出来ませんでした。優れたリーダーに共通する要因を、個人の特性として見つけることはできないことが証明されたのです

しかし、世間では依然として、戦国武将論、三国志論、スポーツ監督論など、リーダー個人の特性に注目したリーダーシップ論が人気です。これらは、エンターテイメントとして割り切ってしまうのが賢明かもしれません



行動理論の登場

その後リーダーシップの研究は、個人の特性に焦点を当てるのではなく、リーダーの行動に注目する「行動理論」 へと発展します。行動理論は、リーダーの行動を @組織に向けたもの A人間に向けたもの、この2つの方向から解明しようとするものです

組織に向けられたものは、トップダウンをイメージさせる「専制型」、「体制づくり」、「生産性指向」、と表現され、人間関係に向けられたものは、ボトムアップ重視に近い「民主型」、「配慮」、「従業員指向型」、と表現されました

行動理論によるリーダシップを図で示すと、次のようになります





※リーダーシップのスタイルがわかる質問表と判定シートを無料でご提供しています。ご希望の方は、「無料ツール」 からどうぞ


そして行動理論では、組織への関心と人間への関心の2つを同時・最大限に高めることが必要である、と主張されたのです

2つの類型分けは調査をもとにした実証的なものでした。しかし、実際のビジネスの場で検証してみると、2つの要素がともに高いリーダーシップがすべての場面で有効であるとは限りませんでした

ここからリーダーシップは個人の特質や行動に依存するのではなく、状況に左右されるのではないか、ということが主張され始めます



現在のリーダーシップ理論

フィードラーは1967年に、リーダーシップの有効性を左右するものとして、「リーダーの地位の力」、「仕事の構造」、「部下との信頼関係」、という3つの「状況」 を取り上げました

そして、リーダーの基本タイプをタスク(業務)指向型と人間関係型に分け、これらと3つの状況の組み合わせにおいて、有効性が発揮される場面を明らかにしたのです

フィードラーの考えは、パスゴール理論として進化します。そこでは、リーダーシップ・スタイルを「命令型」、「支援型」、「参加型」、「達成指向型」の4つに分け、これに「部下の条件」と「環境の条件」という状況が影響を与え、その有効性が決定づけられるとされました

「部下の条件」とは、能力・経験・行動決定の源泉が自分にあると認識しているか否かのことであり、「環境の条件」とは、仕事の複雑度・定型・非定型度合、指揮命令・権限体系の明確度などです

現在、リーダーシップの有効性を決めるのは、その状況にある、ということが研究者の一致した意見となっています

従って経営者・管理職が有効なリーダーシップを発揮するためには、まずリーダーシップにはいくつかの種類があることを理解すること、そして複数のスタイルを身に付け、状況に応じて適切に使い分けることです

前項へ戻る
トップページに戻る








リーダーシップの実践

では、リーダーシップの有効性を左右する具体的な状況について考えてみましょう

フィードラーはリーダーシップ・スタイルをタスク(業務)志向と人間関係志向に分類しています

タスク志向は、リーダーシップの行動理論における「専制型・体制づくり・生産性志向」 であり、人間関係志向は「民主型・配慮・従業員志向型」 といえます

そして捉えた状況には、「部下との関係」 「仕事の構造」 「地位の力」 の3つがあります

そしてリーダーにとって好ましい状況では、タスク志向のリーダーシップが有効とされます。例えば、次のようなケースです

◎部下との関係が良好
◎仕事の構造は簡単・明瞭・定型的
◎地位の力は強い

これと正反対の
×部下との関係が悪い
×仕事の構造は複雑・不透明
×地位の力が弱い

実は、こんな好ましくない状況でも、タスク志向のリーダーシップは有効に働くのです

これ以外の良くも悪くもない状況では、人間関係志向のリーダーシップが有効とされます。例えば次のような状況です

◎部下との関係は良好
×仕事の構造は複雑・不透明
◎地位の力は強い

あるいは、
×部下との関係は悪い
◎仕事の構造は簡単・明瞭・定型的
×地位の力は弱い



4つのリーダーシップ・スタイル

パスゴール理論では、リーダーシップ・スタイルは「命令型」「支援型」「参加型」「目標達成型」 の4つとされています。「命令型」 はタスク志向に近く、「支援型」 は人間関係志向に近いものです

「参加型」 は決定を下す際、部下に相談し、提案を積極的に受け入れるスタイルです。「達成志向型」 は困難な目標を設定し、部下に全力を尽くすことを求めるスタイルです

それぞれのスタイルと状況の関係は次の通りです

  1. 「命令型」 は仕事が曖昧で、ストレスを感じさせるような場合に有効とされ、部下の能力が高い、経験が豊富といったケースではその有効性は低いとされます

  2. 「支援型」 は、部下が明確化された職務を遂行している場合や、指揮命令系統が厳格な場合に効果が高くなります

  3. 「参加型」 のスタイルが有効なのは、部下が自分の意思決定権は自分にあると認識している場合です。この意思決定権が自分にない、と思っていると、「命令型」 の有効性が高まります

  4. 「達成志向型」 のスタイルは、仕事の構造が複雑で、曖昧なときに有効性が高くなります


このようにリーダーシップの有効性は状況に左右されることを考えると、リーダーシップは組織に影響を与える一つの要因に過ぎないことがわかります

私たちはリーダーシップの効用に過度の期待を抱くべきではないのかもしれません

人材が豊富な大企業は、状況に応じて最適なリーダーシップをもつ者をトップや管理職にすることで、環境の変化に対応することができます

これに対し中小企業のオーナー社長や管理職は、複数のリーダーシップを身に付け、状況に応じて使い分ける能力が要求されるのです

前項へ戻る
トップページに戻る








組織に与える影響

リーダーシップと組織に関して、ここではコンピテンシーの開発者として著名な心理学者・マクレランドとEQの先導者のゴールマンのリサーチをご紹介します

リサーチによれば、リーダーシップは次の6つの型に分類されます

  1. 強圧型
    強烈なトップダウンで意思決定を行い、即座に服従することを要求する

  2. 権威主義型
    自らビジョンを持ち、そのビジョンに向けて社員を動機づける

  3. 親和型
    人間を中心に据えて、職務や目標よりも個人とその感情を尊重する

  4. 民主主義型
    関係者の意見を聞き、同意を得るために時間を費やし、信頼、尊敬、コミットメントを築く

  5. 先導型
    高い業績基準を設定し、自分でその模範を示す。効率、迅速、スピードを重視し、周囲にも同じことを求める

  6. コーチ型
    部下に長期的な自己開発目標を立てることを奨励し、目標達成に必要な援助をする。上司としての役割、責任を果たすことを約束し、指導、フィードバックを与える


次に、これらのリーダーシップが組織風土に与える影響を見てみましょう。組織風土として、以下の6つを取り上げています

  • 組織のメンバーがどれだけ革新性を行えるかを示す柔軟性
  • 組織に対する責任感
  • メンバーが設定する基準の高さ
  • 業績評価と報酬に対して感じる公平さ
  • ミッションと価値観に対する理解の明瞭性
  • 共通の目標へのコミットメントの程度

これらの組織風土への影響を測った結果は、次の通りです。数値が高いほどプラスの影響を与えています



リーダーシップ・スタイルが組織風土に与える影響度

強圧型

権威主義型

親和型

民主主義型

先導型

コーチ型

柔軟性

-0.28

0.32

0.27

0.28

-0.07

0.17

責任感

-0.37

0.21

0.16

0.23

0.04

0.08

基準

0.02

0.38

0.31

0.22

-0.27

0.39

報酬

-0.18

0.54

0.48

0.42

-0.29

0.43

明瞭性

-0.11

0.44

0.37

0.35

-0.28

0.38

コミットメント

-0.13

0.35

0.34

0.26

-0.20

0.27

総合結果

-0.26

0.54

0.46

0.43

-0.25

0.42



この結果を見ると、組織風土に好ましい影響を与えるリーダーシップは、権威主義型、親和型、民主主義型、コーチ型であることがわかります。強圧型と先導型はマイナスの影響を与えます



タイプ別の有効な場面

さらに、優れた成績を残す管理職・リーダーは、多くのリーダーシップスタイルを持ち、状況に応じて使い分けていることが明らかになりました

組織にプラスの影響を与えるスタイルのうち、タイプ別の有効な場面は次の通りです

  1. 権威主義型
    新しいビジョンを必要とする変革の時や、明確な指導が必要なとき

  2. 親和型
    チームの不和を解決するとき、ストレスの多い状況下で社員にやる気を起こさせるとき

  3. 民主主義型
    賛同を得たり、合意を築こうとするとき、有能な社員の考えを引き出すとき

  4. コーチ型
    社員が業績を上げたり、長期的な強みを開発するのを助けるとき


組織にマイナスの影響を与える強圧型、先導型も極めて限定的な場面で効果を発揮します

差し迫った危機のとき、大胆な方法転換をするときは強圧型が有効に働きます。また、非常にやる気に満ちた有能なチームから早急に成果を引き出すときは、先導型が有効です

このリサーチはこちらから購入できます
(英語版です)




 
ご紹介した6つのリ−ダーシップを見分ける質問シート、リーダーシップスタイルと組織への影響度をまとまめた一覧表を、無料ツールでご提供しています(A4・5枚)。ご希望の方は、「無料ツール」 からどうぞ


前項へ戻る
トップページに戻る





管理職を成功に導く360度・多面評価はこちら



人事コンサルティング事務所
OFFICE JUST EYE