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定年延長・継続雇用対策
第1章:
改正
された高年齢者雇用安定法とは
第2章:
高年齢者雇用における賃金とは
第3章:
定年制度を見直すともらえる助成金継続雇用制度奨励金

改正された高年齢者雇用安定法とは




平成16年6月に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(以下、高年齢者雇用安定法とする)の一部の改正法案が国会で可決、成立しました

多くの項目が改正されたのですが、ここでは会社にとって最も影響の大きい定年延長について、改正箇所を見ていきましょう






目次




■高年齢者雇用安定法の改正の概要

法9条は以下のような内容なのですが、従来、ここは「努力義務」でした。しかし、改正により、「義務規定」となりました(下線部分が改正箇所)

第9条
定年の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置のいずれかを講じなければならない

  1. 当該定年の引き上げ
  2. 継続雇用制度の導入
  3. 当該定年の定めの廃止


これらをまとめて「高年齢者雇用確保措置」と呼ぶことになってます

わかりやすく言うと、1.の場合は定年を65歳に引き上げることを求めているわけです

2.は労働者が、なんらかの形で65歳まで引き続き働くことのできる仕組みの導入が必要、ということを言ってます

3.は定年そのものを廃止してしまうことです。これを実施できる会社は、あまりないでしょう

だって、定年がなければ、80歳、90歳でも、「ワシは働く!」と本人が言えば、会社は拒めませんから


会社の規模を問わず、すべての会社は、この1.2.3のいずれかの措置をとることが「義務」となったわけです

まあ、実際は2.が最も多く、次に1.
3.はちょっとムリというところでしょうか

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■定年延長・継続雇用制度導入スケジュール

いきなり65歳まで定年を延長することや、65歳までの継続雇用制度を導入することは、会社にとって厳しい状況である、ということは厚生労働省もわかっているため、緩和策が用意されています

それは以下のように、徐々に定年、継続雇用の適用対象となる年齢を引き上げていき、最終的に平成25年4月に65歳定年、または65歳までの継続雇用制度の導入を達成してください、という内容です

具体的なスケジュールは以下のようになっています

◆導入スケジュール

平成18年4月〜平成19年3月:
62歳定年、または62歳までの継続雇用制度の導入


平成19年4月〜平成22年3月:
63歳定年、または63歳までの継続雇用制度の導入


平成22年4月〜平成25年3月:
64歳定年、または64歳までの継続雇用制度の導入


平成25年4月〜:
65歳定年、または65歳までの継続雇用制度の導入


実は、この年度の区切りと定年の年齢、継続雇用制度の年齢の刻みは厚生年金の支給開始年齢と揃えるように設定されてます

平成18年4月1日以降に60歳に達する人は、昭和21年4月1日以降生まれです

この世代の男性(昭和20年4月1日〜昭和22年4月2日生まれ)は60歳から報酬比例部分の年金が支給され、63歳になると定額部分の年金も支給開始となります

この「報酬比例部分」とか「定額部分」の説明をすると、年金の解説ページになってしまうので、ここでは省略します

わからない人は、老齢厚生年金は、最初に「報酬比例部分」が支給され、その後、「定額部分」が追加されるんだ、とだけ憶えておいてください

厚生労働省の考えは、こうした人は、62歳までの雇用の場を確保するから働いください。そして老齢厚生年金は「報酬比例部分」だけで我慢してもらいましょう

その後、63歳になると年金に「定額部分」が追加されるから、会社をリタイアしても、生活設計において大きな支障はでないでしょう、というものです

これって、あくまで法律上のひとつの考え方です。実際は人それぞれで生活設計は違いますから、一概になんともいえない話です


※補足:女性の場合は、これとは異なります
昭和21年4月1日生まれの女性は、60歳から報酬比例部分と定額部分が同時に支給される
昭和21年4月2日〜昭和23年4月1日生まれの場合は、60歳から報酬比例部分が支給され、61歳から定額部分が支給される

女性の年金は男性より早く支給されます。女性の方が長生きするのに、支給開始年齢は女性の方が早いんです。男女平等なのになぜ?

これは、過去にいろいろ、いきさつがあったから、こうなったみたいです。これも本論からはずれるお話になるので、パスします


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■継続雇用制度とは

高年齢者雇用安定法・第9条では、継続雇用制度(現に雇用している高齢者が希望するときは、当該定年後も引き続いて雇用する制度をいう)とされています

そして、厚生労働省によれば、継続雇用制度や定年の引き上げ・廃止といった高年齢者雇用確保措置によって確保されるべき雇用の形態については、必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用を求めるものではない

そして、本措置を講じることを求めることとした趣旨を踏まえたものであれば、常用雇用のみならず、短時間勤務や隔日勤務なども含めて多様な雇用形態を含むものである、としています

つまり、継続雇用後の労働条件については、高年齢者の安定した雇用を確保するという法の趣旨を踏まえたものであれば、雇用に関するルールの範囲内で、労働時間、賃金、待遇などについて、事業主と労働者の間で決めることができるわけです

これまで60歳定年を定めていた企業であれば、60歳で一度定年退職となり、その後、新しい労働条件を結び、継続雇用を図ることになります

ここが「要チェック」です。新しく労働契約を結びますから、過去の賃金、役職、待遇、などはご破算になります。労働条件の提示という一からの始まりです

高年齢者雇用安定法は、あくまで65歳までの雇用の場を提供することを求めており、新たな労働条件が労働者の希望に合わず、結果的にその労働者がその後の再雇用を拒んだとしても、法違反とはなりません

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■希望者全員を対象としないこともできる

高年齢者雇用安定法には、もうひとつ別の緩和策もあります

それは、企業側は継続雇用の対象となる労働者を、ある程度制限できることになっています。希望する者全員を継続雇用の対象とする必要はありません


ただし、第3章で触れている助成金「継続雇用制度奨励金」を受ける場合は、こうした制限を設けることができません。希望すれば誰でも継続雇用の対象とすることが必要となります

◆制限を設ける手続きの方法

具体的には労使協定、労働組合がない企業では労働者の過半数を代表する者との書面による協定(以下単に労使協定等という)によって、継続雇用の対象となる労働者に関する「基準」を定めることが認められています

そして、労使協定等を締結するために努力をしたが、協議が不調に終わった場合は、代わりに就業規則により、この「基準」を定めることでもよい、とされました

※補足:労使協定等は労働者側との同意がなければ締結することができません。これに対し就業規則の変更は労働者側が反対しても、使用者側の一方的な判断で変更することができます。協議してダメな時は、就業規則でこの「基準」を決めちゃってもいいですよ、ということですね


この措置は、改正法施行から大企業は3年間(平成21年3月31日まで)、中小企業は5年間(平成23年3月31日まで)に限っての時限措置となっている

この場合、事業主が労使協定等を締結するための努力をしたかどうかについては、実質的に判断されます

たとえば、使用者側が労働者側に一方的に提案内容を通知しただけのような場合は該当しないとされています。協議したポーズではダメということです


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■対象となる高年齢者の「基準」とは

継続雇用の対象となる労働者の基準については、厚生労働省から、通達において具体的な事例が示されました

≪適切ではないと考えられる例≫

  • 『会社が必要と認めた者に限る』
    (これでは基準がないことに等しいためダメ)
  • 『上司の推薦がある者に限る』(同上)
  • 『男性(または女性)に限る』(男女差別に該当するためダメ)
  • 『年金(定額部分)の支給を受けていない者に限る』
    (男女差別に該当する恐れがあるためダメ)
  • 『組合活動に従事していない者に限る』
    (不当労働行為に該当するためダメ)

そして、以下の点に留意されて策定されたものが望ましいとされています

  1. 意欲、能力等をできる限り具体的に測るものであること(具体性)
    ・労働者自ら基準に適合するか否かを、一定程度予見することができ、到達していない労働者に対して、能力開発等を促すことが出来るような具体性を有するものであること
  2. 必要とされる能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見することができるものであること(客観性)
    ・企業や上司等の主観的な選択ではなく、基準に該当するか否かを労働者が客観的に予見可能で、該当の有無について紛争を招くことのないよう配慮されたものであること


≪具体的な例≫

  • 『社内技能検定レベルがAレベル』
  • 『営業経験が豊富な者(全国の営業所を3か所以上経験)』
  • 『過去3年間の勤務評定がC以上(平均以上)の者』(勤務評定が開示されていること)



≪各社の「基準」について≫

ここで、厚生労働省が集めた各社の「基準」を見てみましょう。なお、この「基準」はあくまで調査段階のものですので、通達の基準を満たしているとは限りません

あくまで参考にして、企業の実情に応じた基準を策定する必要があります


働く意思・意欲に関する基準の例
  • 引き続き勤務することを希望している者
  • 定年退職後も会社で勤務に精勤する意欲がある者
  • 本人が再雇用を希望する意思を有する者
  • 再雇用を希望し、意欲のある者
  • 勤労意欲に富み、引き続き勤務を希望する者
  • 定年退職○○年前の時点で、本人に再雇用の希望を確認し、気力について適当と認められる者

勤務態度にかんする基準の例
  • 過去○○年間の出勤率○○%以上の者
  • 懲戒処分該当者でないこと
  • 人事考課、昇給査定において、著しく評価が悪くないこと
  • 無断欠勤がないこと

健康に関する基準の例
  • 直近の健康診断の結果、業務遂行に問題がないこと
  • 直近○○カ年の定期健康診断結果を産業医が判断し、就業上、支障がないこと
  • 60歳以降に従事する業務を遂行する上で支障がないと判断されること
  • 定年退職○○年前の時点で、体力について適当と認められる者
  • 体力的に勤務継続可能である者
  • 勤務に支障がない健康状態にある者

能力・経験に関する基準の例
  • 過去○○年間の賞与考課が管理職○○以上、一般職○○以上であること
  • 過去○○年間の平均考課が○○以上であること
  • 人事考課の平均が○○以上であること
  • 業績成績、業績考課が普通の水準以上あること
  • 工事、保守の遂行技術を保持していること
  • 職能資格が○級以上、職務レベル○以上
  • 社内技能検定○級以上を取得していること
  • 建設業務に関する資格を保持していること
  • 技能系は○級、事務系は実務職○級相当の能力を有すること
  • 定年時管理職であった者、又は社内資格等級○以上の者
  • ○級土木施工管理技士、○級管工事施工管理技士、○級建築施工管理技士、○級造園施工管理技士、○級電気工事施工管理技士等の資格を有し、現場代理人業務経験者又は設計者である者
  • 企業に設置義務のある資格又は営業人脈、製造技術、法知識等の専門知識を有していること

技能伝承等その他に関する基準の例
  • 指導教育の技能を有する者
  • 定年退職後直ちに業務に従事できる者
  • 自宅もしくは自己の用意する住居より通勤可能な者
  • 勤続○○年以上の者



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【お知らせ】

現在ご覧のホームページは、平成18年春、
ニューリアルしました

今回のテーマは「モチベーション」です

ご関心をお持ちの方は ↑ 





各社の継続雇用制度の具体例

財団法人 高年齢者雇用開発協会の調査から、各社の継続雇用制度の内容を見てみましょう

なお、調査された時期の関係で、最新の法律内容に適したものとなっていない部分もあります


◇製造業A社

  • 定年は60歳
  • 64歳を上限に希望者全員を再雇用とする
  • 再雇用にあたっては、一度退職し、子会社で嘱託として雇用する
  • 契約は1年ごとで、勤務時間は原則フルタイム。週の労働日数は軽減することも可能
  • 基本的には定年前の業務を継続
  • 賃金は一律で年収200万円。通勤手当、食事手当は継続するが、家族手当は不支給
  • 年金、助成金等(←※編者注:高年齢雇用継続基本給付金のことだと思われます)を合わせ定年前の約6割の水準を確保


◇化学品製造業B社

  • 定年は60歳
  • 64歳を上限に会社が必要と認めた者を再雇用する。判断の基準は後継者が育っているか否か。したがって、全員を64歳まで雇用するのではなく、後継者が育った時点で、契約更新2〜3ヶ月前に契約打ち切りを伝える
  • 週5日のフルタイム勤務
  • 給料は、定年時の資格により異なるが、年金+給付金(←※編者注:高年齢者雇用継続基本給付金のことです)+賃金で定年時年収の50%〜60%を確保。食事手当、通勤手当支給
  • 雇用保険、労災保険は適用
  • 健康保険、厚生年金は不適用(←※編者注:週5日のフルタイム勤務でこの規定はちょっと問題になります)


◇機械器具製造業C社
  • 定年は60歳。上限年齢の定めなく最低3年間、特別社員として再雇用する
  • 業務上必要な特殊技能、資格等を有する者が対象
  • 原則として定年前の仕事を継続
  • 週5日のフルタイム勤務
  • 賃金は55歳時給与の70%〜90%の範囲で個別に決定。年金や給付金を想定したものではない
  • ベースアップ、賞与は正社員の8割程度


◇貴金属小売業D社
  • 定年は60歳。希望者のうちから販売成績がよいと会社が認めた者を対象に、最高65歳まで
  • 短時間勤務や出勤日数減も可能
  • フルタイム勤務の者は月給制、短時間勤務等の者は時給換算
  • 賃金はフルタイム勤務の者で定年時の8割が基本
  • 仕事は従来通りの店頭販売

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■違反に対しては

高年齢者雇用安定法違反に対して罰則、企業名の公表といった制裁措置はありません

しかし、これまでの公共職業安定所長の勧告に代わり、厚生労働大臣が必要な指導、助言することができるように改正されました

それでも違反している状態が続けば、厚生労働大臣から高年齢確保措置を講ずべきことが勧告されます


法律改正により、平成18年4月以降、「60歳での定年退職、継続雇用制度なし」、この状態は法令違反となります

ひとたび係争沙汰になると、企業側の敗訴の可能性が高くなりました。敗訴となると、就業規則で定めた定年制度は無効と判断され、「定年の定めのないもの」として扱われる事態が想定されます

労働基準法は「定年」について、何も規定はしていません。「定年」はあくまで会社が就業規則等で定めることで、有効となります

したがって、「就業規則の該当箇所は無効」と判断されると、定年の定めのない会社となるわけです

経営者としては、ちょっと怖い事態です

罰則がないから、といって放置しておくことは、リスク管理の点から見て危険度の高い状況を作り出すことになります

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