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定年延長・継続雇用対策
第1章:
改正された高年齢者雇用安定法とは
第2章:
高年齢者雇用における賃金とは
第3章:
定年制度を見直すともらえる助成金継続雇用制度奨励金

高年齢者雇用における賃金



高年齢雇用継続基本給付金と老齢厚生年金の関係について







目次




◆はじめに

高年齢者雇用安定法の改正により、60歳定年制を定めている会社は、定年を延長するか、または継続雇用制度を導入するか、どちらかを選択しなければならなくなりました

改正された高年齢者雇用安定法 についてはこちらをどうぞ

会社が高齢者雇用を考える上で欠かせないポイントに、賃金・給料をどうするか、があります

60歳を過ぎた在職中の高齢者は、厚生年金の被保険者であり、老齢厚生年金を受給できます。そして雇用保険からは高年齢雇用継続基本給付金が支給されます。(一定の要件を満たすことが必要ですが・・・)

高年齢者の収入は「給料」「老齢厚生年金」「高年齢雇用継続基本給付金」の3つがあるわけです

そして、「老齢厚生年金」と「高年齢雇用継続基本給付金」は、給料次第で支給額が調整されます

高齢者雇用にあたっては、この3つをどのようにバランスをとるかによって、本人の手取り額はもちろん、会社の負担も大きく変わってくるのです

それでは、その仕組みを見ていきましょう




◆高年齢者の賃金の仕組み

60歳を過ぎて一定額以上に賃金が下がると、雇用保険から高年齢雇用継続基本給付金が支給されます

この際、老齢厚生年金をもらっていると、その一部が支給停止されます


賃金が60歳時と比べ、61%未満まで低下すると、高年齢雇用継続基本給付金が「賃金」の15%支給されます。そして、老齢厚生年金は「標準報酬月額」の6%が支給停止となります

賃金の低下が61%〜75%未満に収まると、高年齢雇用継続基本給付金の支給率は15%から段階的に低下していきます

すると、今度は老齢厚生年金の停止される割合は6%から徐々に小さくなっていきます


つまり、賃金が低下すればするほど、高年齢雇用継続基本給付金はより多く支給されます(15%が上限です)

そして、老齢厚生年金はより多くカットされます(最大で6%のカット)

賃金の低下がそれほど激しくなければ、高年齢雇用継続基本給付金は少なくなるが、逆に老齢厚生年金がカットされる割合は小さくなり、より多くの年金が受け取れる、という仕組みなんですね


このようにして調整された老齢厚生年金は、在職老齢年金の規定により、さらに支給調整されます

2度も支給調整されてしまうなんて、ちょっと厳しいですね

ここでちょっと注意が必要です

高年齢雇用継続基本給付金の支給を見る際は、「賃金」を見ています

これに対して、在職老齢年金の支給停止は「標準報酬月額」を見て、決定されます

つまり、この2つは異なるモノサシを使っているわけです

残業代が増えて「賃金」が増えると、高年齢雇用継続基本給付金は影響を受けますが、老齢厚生年金の支給調整額は変化しません

在職老齢年金の支給調整額が変わるのは、「標準報酬月額」が変更された場合です


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◆会社が最初に考慮すべきこと

このように、高年齢雇用継続基本給付金と老齢厚生年金は相互に影響を与えて、支給が調整されます

会社は、老齢厚生年金の金額まで考えて、60歳以後の給料を決めるのか・・・

それとも年金は個人の問題だから、年金まで考慮せずに給料を決めるのか・・・

これを決めておく必要があるでしょう


終身雇用制度が維持されているなら、その人が受け取る年金額は、いま勤めている会社の給料の反映ですから、会社にも少しは責任というか、義務があるのかもしれません

しかし、過去に転職をしてきた人の年金がいくらになるか、なんて今の会社からみたら「関係ない話」ですよね

年金も含めて、60歳以後も収入をある程度確保する配慮をするのか、それとも、60歳以後は継続雇用は約束するが、年金も含めた生活面までの配慮は行なわないとするか・・・

このあたりは、経営者の考え方がハッキリ出るところだと思います

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◆在職中に老齢厚生年金を受給すると・・・

60歳を過ぎた在職中の高年齢者が、一定の要件を満たしていると老齢厚生年金が支給されます、これは一般的に、「在職老齢年金」とよばれています

高年齢雇用安定法が、定年延長、継続雇用制度の導入の義務化で指定している平成18年4月1日以降に60歳に達する人は、昭和21年4月1日以降生まれにあたります

この世代の老齢厚生年金支給開始年齢は男女とも60歳からです。老齢厚生年金の報酬比例部分(部分年金とも言われます)の支給が始まります


老齢厚生年金は在職中に支給を受けると、給料(賞与も含まれます、以下では報酬という)の額よって、支給調整(年金カット)が行なわれます。場合によっては全額支給停止となる場合もあります

年金と報酬の合計が月額28万円を超えた段階から、老齢厚生年金の一部支給停止が始まります


この28万円というラインは、「支給停止調整開始額」と呼ばれ、毎年見直しされることになっています

「 在職老齢年金の支給停止の仕組み 」は、平成17年4月から改正されています

在職老齢年金の早見表はこちら

さらに現在の厚生年金制度では、男性は昭和24年4月1日以前生まれ、女性は昭和29年4月1日以前生まれの者は、65歳までの間に年金額が増加するんです

具体的には以下のような場合があります

  • 一定年齢に達すると定額部分が追加されるようになる
  • 加給年金とよばれる年金が支給される
  • 本人が老齢基礎年金の支給繰上げを行なう
  • 退職時改定が行なわれる


退職時改定とは、たとえば62歳で一旦退職。その後は継続雇用制度のもと、厚生年金には加入せず働き続ける場合などです

この場合は、60歳から年金を受給していると、退職後に60歳から62歳まで勤めていた間の厚生年金の加入期間を含めて、年金の再計算をします

その結果、年金がアップします


このように、老齢厚生年金は65歳までの間で増加していきます。このため、継続雇用制度で示される賃金によっては、高年齢者の就労態度・意識が大きく変わることが予想されます

60歳から65歳の間に年金が増えると、もらう年金と給料を比較して、なんだか働くのが「損」みたいに思えるようになっちゃうわけです

おまけに働くせいで年金が多めにカットされているから、なおさらです

会社として継続雇用制度で働いてもらいたい高年齢者がこれを拒み、逆にさほど期待できない高年齢者が、会社にしがみつくことになりかねない、なんてこともありえることにります

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◆高年齢雇用継続基本給付金とは

働きながら老齢厚生年金を受給すると、その一部または全額が支給停止となります。すると高年齢の社員は、安い給料で働くことがバカバカしくなり、60歳で退職してしまうケースが多かったんです、これまでは・・・

とくに昭和16年4月以前生まれの人、今・64歳以上の人たちというのは、厚生年金にいまでいう「報酬比例部分」「定額部分」なんていう区別がありませんでした

60歳になったら、それまで掛けて来た厚生年金を計算して、ポンって受け取れたんですね。いまから見えるとすごく有利です

でも、政府としては財政を考えるから、60歳を過ぎても働ける人は働いてほしい、というのがホンネ。そこで雇用保険から雇用を継続させるための給付金を支給しよう、という話になりました


これにより、60歳を過ぎて賃金が下がると、それを補うように給付金が支給されるようになりました

これにより、60歳を過ぎた人が、「少しでも働き続けてくれると助かるなあ」、という政府の期待があるわけです

働く側からすると、「60歳を過ぎて働くと、給料は下がるし、おまけに年金もカットされる。踏んだり蹴ったりじゃねぇか。でもまあ、雇用保険から多少お金が出るならまあしょうがねぇ、もう少しがんばるか」、なんてことになります

また会社側も給付金が出ることで、その分を見込んで賃金を下げることが出来ます。これにより高い給料の高年齢者の雇用の継続について、前向きに考えることができるわけです

なお、高年齢雇用継続基本給付金は、直接労働者に支払われます。会社に支払われるものではありません、念のため

◇支給要件

  1. 60歳以後も、雇用保険の被保険者として雇用されていること
  2. 雇用保険の被保険者期間が5年以上あること
  3. 賃金が60歳時と比べ75%未満まで低下したこと
  4. 賃金は346、224円未満であること

◇支給額

  • 賃金が60歳時と比べ、61%未満まで低下すると、その下がった賃金の15%が支給される
  • 賃金の低下が61%以上75%未満の場合は、15%から一定の割合で低下した率で支給される
  • 賃金の低下が75%以上の場合は支給されない

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同じ年収でも、受取り総額や社会保険料負担が違う

では、実際に高年齢雇用継続基本給付金が、高年齢者と会社にどのように影響を与えるか、具体的に見ていきましょう

年収348万と420万円で、比較してみます。老齢厚生年金は同じ月額20万円、60歳時の給料も同じ40万円です

※平成17年4月から在職老齢年金の支給停止の仕組みが改正される。この表は同改正を踏まえたものとなってます

Aさん

Bさん

年収

3,480,000

4,200,000

≪内訳≫

月給

240,000

300,000

年間賞与

600,000

600,000

支給調整後の老齢厚生年金(1年間分)

967,200

780,000

高年齢雇用継続基本給付金(1年間分)

432,000

小計

4,879,200

4,980,000

年間社会保険料

▲432,288

▲521,724

年間所得税

▲98,400

▲121,400

合計 

4,348,512

4、336,876



Bさんは高年齢雇用継続基本給付金が支給されず、老齢厚生年金の支給調整額も多くなっています。このため、年収はAさんより多いが、手取りの総額はAさんより低くなっている。ちょっとショキングでしょ

会社側からすると、AさんとBさんでは、年間の給料の負担の差は72万になります。社会保険料負担も違ってきます。会社とすれば、Aさんのような給料設定が賢いやり方ですね

Aさんは、この現役で働いている間の厚生年金の掛金がBさんに比べて少ないです。会社勤めを完全にリタイアした時に年金を再計算するとき、ちょっぴりBさんに比べると不利ですね


≪参考≫ 
Aさんの在職老齢年金の計算は次のようになってます

まず、在職老齢厚生年金の仕組みによる支給停止は・・・
月額年金20万+月額の報酬(賞与も含まれます)29万=49万
この場合は28万を超えた報酬の2分の1が支給停止となる
(49万−28万)÷2=105,000円

続いて高年齢雇用継続基本給付金が支給されることによる支給停止は・・・
月額の報酬24万(ここは賞与は含まれません)×6%
=14,400円

「標準報酬月額」の6%です。「賃金」の6%じゃありません

以上の結果として、
年間の年金受給総額:240万

在職老齢年金による支給停止:
105、000円×12カ月=126万

高年齢雇用継続基本給付金による支給停止:
14、400×12カ月=172、800

Aさんが受け取る年金額は、
240万円−126万円−172、800円
=967、200円となる

(↑すごく複雑でしょ、頭が混乱します)
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◆高年齢雇用継続基本給付金と老齢厚生年金は別制度

高年齢雇用継続基本給付金は労働保険制度の仕組みであり、老齢厚生年金は社会保険制度の仕組みです。少し前まで、労働保険は労働省、社会保険は厚生省だった名残りです。

両制度の間では、「給料」や「被保険者」の取り扱いが今でも異なっています

企業が支払う給料であっても、雇用保険の「賃金」になるものと、厚生年金の「報酬」となるものは違います


端的な例は賞与の取り扱いです。老齢厚生年金の支給停止を求める場合には、賞与は報酬として算入されます

これに対し、雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金を求める際には、賞与は賃金として算入されません


また、被保険者の定義も異なるため、同じ人が厚生年金に加入は出来ないが、雇用保険には加入できる、あるいはその逆、という場合も起こります

特に60歳で一度退職し、継続雇用制度のもと、1年間の労働契約で、しかも短い労働時間で働く、といった場合などは混乱しやすいです

整理してみましょうか

◇雇用保険の被保険者とは

雇用保険では1週間の所定労働時間が、正社員の1週間の所定労働時間よりも短く、かつ30時間未満である者を「短時間労働者」としている

そしてこの短時間労働者が、雇用保険の被保険者となるためには、1年以上の継続雇用が見込まれ、なおかつ1週間の所定労働時間が20時間以上であることが求められる

1年以上引き続き雇用されることが見込まれるとは、次のいずれかに該当する場合となる

  1. 期間の定めがなく雇用される場合
  2. 雇用期間が1年である場合
  3. 3か月、6か月など短期の期間を定めて雇用される場合であって、雇用契約においてその更新規定が設けられているとき(1年未満の雇止規定がある場合を除く。)
  4. 3か月、6か月など短期の期間を定めて雇用される場合であって、雇入れの目的、その事業所の同様の雇用契約に基づき雇用される者の過去の就労実績等からみて、契約を1年以上にわたって反復更新することが見込まれるとき

◇厚生年金の場合

厚生年金では、短時間の勤務の者は、1日又は1週の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が、正社員の4分の3以上である者を被保険者とすることになっている

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◆賞与の支給次第で、個人も企業も負担が変わる

では、具体的に賞与がどういう影響を与えるのか見てみましょう

同じ年収400万円で比較してみます。年金額も月20万円で同じ、60歳の賃金も40万円で同じ、としています

 

Xさん

Yさん

年収

4,000,000

4,000,000

≪内訳≫

月額給料

240,000

300,000

年間賞与

1,120,000

400,000

支給調整後の老齢厚生年金(1年間)

707,202

800,002

高年齢雇用継続基本給付金(1年間)

432,000

小計

5,139,202

4,800,002

年間社会保険料

▲496,882

▲496,880

年間所得税

▲104,800

▲118,600

合計

4,537、520

4,264,552


このように、企業としては同じ給料を支給していながら、高年齢者の受け取る実質の手取り収入は違ってきます

この事例では、高年齢雇用継続給付金の有無が大きな影響を与えていることがわかりますね

≪参考≫
 Xさんの在職老齢年金の計算

まず、在職老齢厚生年金の仕組みによる支給停止は・・・
月額年金20万+月額の報酬(賞与も含む)333、334
=533、334
この場合は28万を超えた報酬の2分の1が支給停止となる
(533、334−28万)÷2=126、667円

続いて高年齢雇用継続基本給付金が支給されることによる支給停止は・・・
月額の報酬24万(賞与は含まない)×6%=14、400円

以上の結果として、
年間の年金受給総額:
240万

在職老齢年金による支給停止:
126、667円×12カ月=1、520、004

高年齢雇用継続基本給付金による支給停止:
14、400×12カ月=172、800

Xさんが受け取る年金額は、
240万円−1、520、004−172、800円=707、196円

表の数字とは端数処理の方法により異なってます

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◆まとめ

高年齢者の賃金・給料を決定する際の注意点をまとめておきましょう

  • 厚生年金保険、雇用保険の各制度に加入するのか
  • 在職老齢年金の支給調整
  • 高年齢雇用継続基本給付金が支給されるのか否か
  • 月額給与と賞与の割合をいかに振り分けるか
  • 60歳から65歳までの間で老齢厚生年金が増加した場合への対応


特に、「会社の定年は60歳、その後は継続雇用制度のもとで、雇用契約を再度締結する」という場合は、これまでの労働条件は全部白紙に戻ります。

そして、再度労働条件の提示から始まります

このように、会社にとって最も適切な賃金、賞与を求めるためには各高齢者別にシュミレーションが必要になります

計算式は複雑なため、電卓でこれを求めることは困難です。市販の専用ソフトを使って求めるか、専門家に依頼するのが賢明です

なお、ソフトウェアを利用する際には最新の法律改正に対応しているかどうか、確認が必要です

高年齢者の手取り額の計算は「雇用保険法」「厚生年金保険法」「健康保険法」「介護保険法」「所得税法」の法律改正による影響を受けます。これらの法律は、ほぼ毎年のように改正があります

ネットでダウンロードできるソフトのなかには、数年前の計算式、保険料率のまま更新されていないものもあります

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◆ご注意

このページは、わかりやすさを最優先に制作いたしました。そのため、一部の法令用語、条文解釈、例外規定等については、簡素化、省略化し、平易な表現としています

運用、適用にあたってはご注意ください。このページの内容に関するお問い合わせ、ご質問は以下のメールアドレスからどうぞ
justeye367@yahoo.co.jp


◆お知らせ

オフィス ジャスト アイでは、高年齢者の給料を決定する際に必要なシュミレーションを行なっています

対象となる社員の方のデータをもとに、給料、高年齢雇用継続基本給付金、支給調整された老齢厚生年金のシュミレーションを一覧表にして作成します

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