モチベーション測定 活用事例  【個人編】


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ここでは実際の結果を使って「モチベーション測定」 の活用事例を見ていきます。この測定ではモチベーションを構成する8つの要素を取り上げ、それぞれの「理想」 と「現状」 のレベルを数字で明らかにします

A さんのモチベーションの「理想」 と「現状」 は次のような結果でした



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 内容  理想 現状  格差 
 A 専門志向 86 60 26
 B 自己表現 39 53 -14
 C 自立志向 20 47 -27
 D 人間関係 72 60 12
 E 管理志向 34 50 -16
 F 安定志向 66 39 27
 G 評価志向 66 73 -7
 H 公私充実 73 27 46



理想が高い項目に注目することで、被験者のモチベーションの特徴がわかります。A さんの場合、モチベーションの理想が高いのは 「A:専門志向」(86点) と「H:公私充実」(73点) です

数値の下には、モチベーションの「理想」 の数値を基に、被験者のモチベーションの特徴が文章で解説されます。A さんは専門的な知識を身につけることや、専門的な職務に就くことでモチベーションが上がり、その道の第一人者となることを理想としていることがわかります。また、公私のバランスを大切にしたいと考えており、仕事とプライベートの両方が充実されることで意欲が高まる人です

一方、「自立志向」 は20点と低く、自ら方針を立て、実行していくことにあまり関心がありません。上司や周囲の判断を待って、それに従う傾向があります。そうした姿勢が影響しているせいか、「管理志向」 も低く(34点)、人の先頭に立ち組織やチームを率いていくことにも興味がありません


次に 『理想 と現状の比較』 を見てみましょう。ここでは「理想」 と「現状」 の格差が大きい要因が2つ取り上げられ、格差がもたらしている状況と対処方法が示されます。A さんの場合、「H:公私充実」 が+46、「C:自立志向」 が−27となっています



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「H:公私充実」 にようにプラスの格差は、理想よりも現状が低く (理想>現状)、理想が満たされていないという不満状態にあります。A さんの場合は長時間労働により仕事と私生活の両立が図られず、自らの理想とするモチベーションである公私充実が阻害され、意欲が低下している恐れがあります

一方、「C:自立志向」 のようにマイナスの格差は、理想<現状という状態で、現状が過剰に満たされている状態です。本人はあまり価値を置いていない要因に対し、過度に期待されたり、要求された状態になっています。A さんは、「C:自立志向」 の理想が極度に低く、自ら判断して行動することでモチベーションが高まることはないにも関わらず、そうした状況に置かれているようです

そして、A さんの「H:公私充実」 の要因のように、理想が高いモチベーションがここでも取り上げられる場合は注意を要します。自らの抱く高い理想と現状に大きな格差があることになるからです

A さんの場合の対策としては、長時間労働の解消を図るため、上司や管理職は仕事の量や進め方、役割分担のあり方などを見直し、効率的な職務遂行ができるように指導したり支援をします。A さんは 「C:自立志向」 の理想が20点と低いため、自発的に行動を起こし、状況を改善するという傾向には乏しいものがあります

また、この「自立志向」 は格差はあるものの理想は低いため、早急に改善を施す必要性は薄いといえます。中長期的な視点に立って、自立志向の向上が必要となった場合に備え、人材育成上の課題とします


次にA さんの理想と現状のバランスを見てみましょう。この 「モチベーション測定」 では、縦軸に 「理想」 の数値を取り、横軸を 「現状」 の数値として、「理想」 と 「現状」 を比較したグラフが作成されます

A さんの場合は次のようになりました



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 A 専門志向  E 管理志向
 B 自己表現  F 安定志向
 C 自立志向  G 評価志向
 D 人間関係  H 公私充実





グラフを縦軸に沿って上から眺めると、モチベーションの理想の高い順に並びます。グラフの横軸に沿って眺めると、右端に位置する要因ほど現状が満たされていることになります
 
ここからA さんはグラフ右上の領域にある「A:専門志向」「D:人間関係」「G:評価志向」 の理想が高く、それが現在満たされた状態であることがわかります。自分の専門性が活かせる、あるいは目指すべき専門性を高めることができる職務に就き、豊かな人間関係の中で職務や成果に見合った評価を得ている、と言えそうです

一方、左上の領域は理想が高いながらも現状が満たされていない 「不満領域」 です。ここはモチベーションを低下させている要因が入ります。A さんの場合、「F:安定志向」 と「H:公私充実」 が位置しています。雇用条件や職務内容、職責、賃金などの処遇・待遇面で何か安定性に欠けるものがあり、その事がモチベーションを低下させています。また、仕事と私生活の両立が困難である状況も働く意欲を低下させています

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モチベーションの相対評価

では不満領域にある 「安定志向」 と 「公私充実」 というモチベーションは、A さんに固有の問題なのでしょうか、それとも部署内の他のメンバーにも共通しているのでしょうか。この 「モチベーション測定」 では被験者とその他のメンバーとの比較から、被験者のモチベーションの相対評価を行います

モチベーションの要因ごとに、「理想」 と「現状」 の関係について、被験者と同じ部署に属する他の人たちとの比較を行います。下のグラフでは A さんの位置が ■ 、他のメンバーの位置は □ となっています




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      【安定志向】         【公私充実】 
 



部門全体で見ると、「安定志向」 については左下の「無関心領域」 にいる人もおり、総じて関心が薄そうです。こうして見ると、A さんは他のメンバーよりも「安定志向」 について強い理想を抱いていることがわかります。ここからA さんの「安定志向」 の問題は企業・部署といった組織の問題ではなく、A さん固有の事情によるものと判断できそうです

一方、「公私充実」 では部署のほぼ全員のモチベーションが不満領域にあり、仕事と私生活の充実が図られないことによるモチベーションの低下は組織全体に及んでいることがわかります

A さんは「専門志向」 と「評価志向」 において高い理想と現状を示していることから、何らかの専門性により評価を受け、そのことで処遇が変わる状況にあるのかもしれません。今後年齢を重ねるごとに 「安定志向」 の理想が高くなると、さらにモチベーションが低下する恐れがあります

こうした被験者特有の事情が推察される時は、経営者や管理職、人事担当者などはフィードバックや面談などを通じて処遇の安定性について何か問題がないかどうかを尋ね、個別に対応することが必要です

部署全体にわたる問題は、経営陣や部門責任者が人事労務管理やマネジメント、職務遂行プロセス、組織風土の改善・改革・刷新に取り組むことがことが求められます。具体的な見直しのテーマとしては次のようなものがあります
  • 仕事の質と量
  • 各自の職務範囲の拡大・拡充
  • 役割・職責・職務権限
  • 人員配置
  • メンバーの能力・スキルアップ
  • 人事評価制度、目標管理制度
  • OJTや教育研修
  • 就業規則

部門を越え、会社組織全体のモチベーションを診断・分析し、対処する方法は 活用事例・組織編 でご紹介しています。また、組織診断 というアセスメントを行うという選択肢もあります


「モチベーション測定」 の他者との比較では、被験者の部署内における特徴にも注目します。A さんの場合は、「専門志向」 というモチベーションが際立った位置にあります



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      【専門志向】  
 



しかも A さんの 【専門志向】 というモチベーションは 「満足領域」 に位置しています。これはA さんにとって “強み” となります。このように被験者は部署内における自分のモチベーションの “強み” がわかることで、そのモチベーションを積極的・意識的に活用することができるようになります。それにより、これまで以上に組織・チームに貢献できるようになります



自発的な行動変化を促す

これまでのA さんの診断・分析結果をまとめると、次のようになります

 理想の高い要因 理想の低い要因  格差が大きい要因  他者と比べ特徴的な要因 

  • 専門志向 86

  • 公私充実 73

  • 自立志向 20

  • 管理志向 34
 

  • 公私充実 +46

  • 自立志向 −27
 

  • 専門志向



こうして得られた結果を基に、被験者自らが自分のモチベーションの特徴を理解・確認します。そして、それぞれのモチベーションが職務を遂行していく上でどのような特徴や傾向となって現われているのかを振り返ってみます (こうした作業を支援するワークシートも用意しています)

格差が大きい要因は積極的に解消を図ります。アセスメントのフィードバックを参考に、出来ることは何か、視点や意識をどのように変えればよいか、今の自分に欠けているもの・必要とするものは何か、などを整理します。併せて将来のキャリアを見据えて、このままの状態で推移しても問題がないのかも検討します

他者と比べ特徴的な要因が “強み” となっている場合には、いかにして積極的な活用を図るか、逆に “弱み” となっている場合には、克服することはできないか、プラスに転じる方法はないかを検討します。被験者の年齢がある程度高い場合は、“強み” を積極的に活かすことで “弱み” を補うという方策が適しています

このように被験者自らが自分のモチベーションの特徴を理解し、実際の職務や役割・期待・キャリアと結び付けながら、今後の行動計画や目標計画を策定します。こうした作業が被験者の自発的な行動の変化を促します



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「不満領域」(グラフの左上)に位置するモチベーションの要因ごとの主な対処方法は次の通りです


【A:専門志向】
  • 専門技能を活かせる職務に就かせる
  • 専門知識を活かした役割・成果を期待する
  • 専門知識やスキルを学べるOJTを行う
  • 専門的な教育・研修を受講させる
  • 資格や免許取得を支援する

【B:自己表現】
  • 自らの発想・発案で取り組ませる
  • 企画や計画を立案させる
  • 改善策を提案させる
  • 職務の遂行で自分らしさを発揮させる
  • 職務を拡大し、職責を広げる

【C:自立志向】
  • 期日と成果を決めて、後は自由にさせる
  • 求められない限り支援や干渉はしない
  • 細かい管理や指導は控える
  • 権限を委譲し、逐一報告を求めない
  • チームに入れるより一人でやらせる

【D:人間関係】
  • 絶えず監視ではなく、注視していることを伝える
  • チーム内での役割を定め、期待する
  • メンバーとして迎え入れる
  • いつでも誰かを支援する、誰からも支援される環境を整える
  • 個人の成果ではなく、チームでの成果を求める

【E:管理志向】
  • 仕事外も含めて何か中心的な役割を担わせる
  • 仕事には社外の人間も含め他者を関与させる
  • 非公式な組織・集団を編成し、リーダーを公募制、交代制にする
  • 部下・後輩の指導育成を職務にして、結果を評価する

【F:安定志向】
  • 成果による処遇の過度な変動を抑える
  • 短いサイクルでのジョブ・ローテションは控える
  • 頻繁な職務・役割の見直しを避ける

【G:評価志向】
  • 誉める、認める、感謝する
  • 注意深く観察し、プラス評価の発見に努める
  • 期待していること、必要とされていることを伝える
  • 非金銭的報酬を充実させる

【H:公私充実】
  • ワークライフ・バランスを整える
  • 労務管理の改善を図る(特に労働時間)
  • 有給休暇・連続休暇の取得促進を図る









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