人事労務管理と人材マネジメントに関する情報発信

イノベーションをもたらすのはどんな人



新型コロナウイルスは終息をみせず、世界中で経済・社会情勢の先行きは不透明感を増している。このような昨今の情勢は、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の頭文字を取って、「VUCA」と呼ばれている。これは元々、予測不能な状態を示す軍事用語だったが、最近ではビジネスの場でも用いられることが多くなっている。

企業が「VUCA」に対処するための一つの方法は、予測不能な将来を予想するのではなく、起こりつつある現実に対し、イノベーションとそれに伴う新陳代謝で対処することだ。しかし、イノベーションについての複数の国別の比較調査では、日本企業のイノベーションについて懸念される結果が明らかになっている。

個々の日本人を見れば、ノーベル賞の授賞者数や文化・芸術での国際的な大会での評価からすると、決して引けを取っていないと思われるが、個人が集まる組織になるとイノベーションを阻害する何らか力が働いているのかもしれない。






破壊的イノベーターたちの特徴とは


イノベーションについて大家と目されている、クレイトン・クリステンセン(Clayton Christensen)は、破壊的とも言えるイノベーターと彼らの興した会社は他の会社とどこが違うのか、そして彼らはどのようにしてアイデアを生み出すのかを、企業戦略に注目するのではなく、彼らの思考方法を掘り下げて明らかにしている。足掛け8年に渡る世界75か国の500名を超えるイノベーターたちからの聞き取りを行い、彼らと対比するため5000人の企業幹部の自己評価および360度多面評価のデータを収集した。

調査の結果、イノベーターたちには共通して5つの基本的なスキル(発見力)を有しており、クリステンセンはこれを イノベーションのDNAと命名している。その5つの基本的なスキルとは ①質問力、②観察力、③ネットワーク力、④実験力という4つの行動的スキルと、行動によって得られた結果を⑤関連づける思考力という認知的スキルで構成されている。


イノベーションのDANを示す図
イノベータのDNAモデル


そして、イノベーションという創造性や創造力を発揮するには、頭脳作業による認知的スキルだけでなく、行動が大きな役割を果たしており、この行動を引き起こす背後には ①現状を変えたいという強い願いや意志と、②リスクを認識した上で、自らの責任で果敢にリスクをとる「スマートリスク」がある。イノベーションのカギを握るのが行動であれば、私たちの誰もが行動を変えることで創造的になれる可能性がある。

一方、イノベーターたちと対照的な経営幹部たちは4つの実行力に秀でていた。その4つとは、①分析、②企画立案、③行き届いた導入、④規律のある実行で、実務に即した処理能力と言える。成功するイノベーターたちの多くは、こうした実行力を備えた人物を身近に置き、自らの不足する能力を補っていた。


イノベーティブな管理職になる方法とは


クリステンセンが注目した破壊的とも言えるイノベーションは主に経営者や企業の上層部の人が調査対象だったが、会社組織がイノベーティブになるには、現場レベルで自然発生的にイノベーションが起こることも必要だ。4つの実行力に秀でた管理職に対し、イノベーションを生み出す方法を示唆してくれる理論として オットー・シャーマー(Otto Scharmer)の唱える U理論 がある。

「U理論」はチームや組織、社会においてイノベーションを生み出す方法を体系化したもので、イノベーションの分野で著名な150人を超える人とのインタビューと、戦略や「知」、リーダーシップに関する研究成果から、イノベーションを起こす人々や創造性に富んだ人たちに共通する意識の変容・動きを明らかにしている。彼らの意識はアルファベットの「U」の字を描くように進行するため「U理論」と命名されている。


U理論を示した図
U理論の体系図


U理論ではまず管理職は、自らが左上の「ダウンローディング」の状態にあるという「盲点」に気が付くことにより出発点に立つことができるとする。「ダウンローディング」とは、パソコンやスマホでサーバー上のソフトやアプリをダウンロードして利用するように、すでに備わっている自らの先入観や固定観念、過去の思考のパターン・枠組みなどを用いて現象や問題を理解、評価している状況を指す。

まず自らが「ダンローディング」に支配されていることに気づき、徹底した観察により現象を心で観て感じ取り、習慣的な判断を手放すステップへ進むことにより、「ダウンローディング」の状態を捨て去ることがイノベーションに向けた第一歩になる。

マネジメントの基本とされるPDCA(Plan・Do・Check・Action)は過去の出来事を踏まえて未来を改善する手法と言え、過度なPDCAはイノベーションにとっての天敵なのかもしれない。


2020/10/31








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