人事労務管理と人材マネジメントに関する情報発信

会社は大きくしない方がよいという話


「人生100年時代」に対応するため、国は高年齢雇用安定法を改正し、企業に対し70歳まで働ける場を確保するように求めた。だが皮肉なことに、それを契機に大企業でのリストラが加速している。40歳前後で出世レースはほぼ決着する大企業にすれば、昇進の見込みがない中高年の社員を70歳まで雇用し続けるのは負担が大きい。また本人にとっても不遇な環境でこの後30年もの間、働くことは精神面であまり健全とは言えないという側面もある。

では会社員を辞めて、自分でビジネスを始めるという選択肢はどうか? 世間一般では独立開業はリスクが高い、小規模な会社は経営が不安定と思われている。だが、それは誤りだと唱えるのが自ら「小さな会社」を経営し、その魅力を発信し続けているポール・ジャルヴィズ(Paul Jarvis)だ。


ポール・ジャルヴィズの写真
ポール・ジャルヴィズ(Paul Jarvis)


彼によれば規模の大きい会社が安定しているとは必ずしも言えず、高収入が約束される保証もない割に、自らが関与しない所で自分のキャリアや人生が左右される。


小さい会社の良さとは


ジャルヴィスは自分でビジネスを始めても、短期間で大きく成長させることは良いことではないと説く。むしろ会社を小さくしておくことで、変化の激しい市場でも生き残れ、個人としての余裕も確保できる。規模を拡大するより、ビジネスをもっと良くすることを目指し、顧客の役に立ち、顧客が成功するのを手助けすることで、一人あたりの付加価値の大きさを目指す。

ビジネスの規模を拡大すると、社員が増えて手に負えなくなり、手続きや規則・規定などの膨大な管理コストがかかり、抱えきれない仕事を抱え込んでしまう。小さいビジネスに留めておくことで、変化に見舞われても柔軟に回復力できる「弾力性」が備わり、仕事を自分でコントロールする自由が生まれる。また身軽でシンプルなゆえ、素早く実行して、軌道修正ができる。

小さい会社を支える環境も整っている。ネットやブログ、メール、SNSを使った情報発信、オンラインによる打ち合わせや商談、必要な機能だけを利用できるSaaS(Software as a Service)、クラウドファンディングのような小口の資金調達、仕事で必要な人材を確保できる外注先紹介サービス、小規模ビジネスに対する社会の理解や認知などは創業から運営までを支えてくれる。

小さなビジネスは大手に蹂躙されるだけではないかという懸念は無用だ。大企業の新規ビジネスではどうしても売上が100億円程度の規模が求められる。彼らはその金額に満たない小さなビジネスは手間がかかりすぎる割に利益が少なく、採算が取れないため参入したくてもできない。


スモール・ビジネスの始め方


ジャルヴィスの唱えるビジネスモデルの特徴は、とにかく小さく始める、他にないあなたという特徴を武器にする、長い時間をかけて経験やスキルを身につけ、信頼や仕組みなどを築き上げるというものだ。これを彼は「company of one」(一人の会社)と呼んでいる。

そして目的を持つ重要性を指摘する。あなたは何のためにその仕事をするのか、仕事をして何を得たいのか、どんな風になりたいのかであり、それはどういう生き方をしたいのかにも通じる。それがなければ長期間に渡って仕事を続けられない。





ジャルヴィスが自らの体験を元に勧めるビジネスの始め方をご紹介しよう。まず自らが手掛ける商品やサービスを購入したり利用すると見込まれる人の所へ話を聞きに出向く。そして相手がどうやって取引先を見つけているのか、購入や利用の決め手は何か、今の商品・サービスに困りごとはないか、どんな点が改善されると取引先を変えるか、などを聞き取りする。

そして無料でちょっとした手助けやアドバイスをしたり、相談に応じることを申し出る。その際は売り込みをせずに、相手が何を求め、利用や購入の決め手になる要因を見つけるようにする。相手と人間関係を築き、知識や情報を共有することで学習する。

こうした情報を蓄積していくことであなたはその分野でのプロになり、悩みを抱える人たちの解決請負人のような存在になれる。そして得られた情報をネットやブログ、ユーチューブなどを使って発信する、セミナーや相談会を開催する、自費で本にする、自分が提供する商品やサービスに活用する。こうした活動を会社員と二足のわらじで続けながら、ある程度の顧客や収入の確保の道筋をつけてから独り立ちする。


自分らしさを考えてみる


注意するのはジャルヴィスの唱えるビジネスが適しているのは法人よりも個人事業主や小規模なビジネスオーナーである点だ。そして提供する商品・サービスは柔軟に変更・修正できることが望ましい。また英語を使ってビジネスを展開することで、顧客は世界中に星の数ほどいるのが前提になっている。

日本で法人相手に大量にモノを製造したり、特定の地域にだけ提供するサービスは不向きかもしれない。逆に言えば、そうしたスタイルを取らずに済むやり方を考えればよい。

会社を小さくしておくことは「足るを知る」ことに通じる。会社を大きくして収入が増えても、おカネを使う時間がなかったり、使える以上の預貯金はおカネがないのと大して変わりはない。レストランで大量の注文をして、無理やり胃袋に詰め込みながら残してしまい、カロリー消費のために好きでもない運動に精を出す、そうした姿が本当に自分らしいのかをビジネスを始める前に考えてみてはどうだろう。



ステイ・スモールの表紙

STAY SMALL」 ステイ・スモール~会社は「小さい」ほどうまくいく
ポール・ジャルヴィス 著 ポプラ社 税別1800円


2022/09/17



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