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ここが違うニトリの経営


『お値段以上、ニトリ』のCMでお馴染みの ニトリ の業績が好調だ。国内店舗は650店ほどあるため、身近なお店で買い物をされた方もいるだろう。

創業者の似鳥昭雄氏はダメな会社員から一念発起し自ら商売を始め、ニトリを上場するまでに成長させた。今回はそんなニトリの経営の秘密を探ってみよう。



似鳥昭雄 氏


経営の柱はロマンとビジョン


似鳥昭雄氏は著書の中で、繰り返し「ロマンとビジョン」について語っている。しつこいくらい何度も何度も「ロマンとビジョン」が大切であると唱え、それがニトリの経営の中核になっている。おそらく社内でも、何度も「ロマンとビジョン」について語っていて、社員にすれば「ああ、またか」という受け止めをしているのではないだろうか。

「ロマン」とは会社の大きな志で、似鳥氏のロマンは「住まいの豊かさを日本の人々に提供する」ことだ。一方、「ビジョン」とはロマンを実現するための20年以上先の具体的な精度を持つ目標だ。

そして、ビジョンとは不可能と思える目標を掲げ、それを果たすために突き進むのが本来の姿であるとし、目標設定に当たっては「100倍発想」を基本にしている。この「100倍発想」は、似鳥昭雄氏が師と仰ぐチェーンストア専門の経営コンサルタント、渥美俊一 氏の教えだ。

似鳥氏は「ロマンとビジョン」は経営だけでなく、人生を送る上でも重要であるとして、社員のために「成功の5原則」を唱えている。それは「ロマンとビジョン」に加え、「意欲」「執念」「好奇心」だ。

社員が「ロマン」を掲げ、「ビジョン」という目標を達成できるようにするため、ニトリでは 生涯設計キャリアップシート を活用している。社員は自分の70歳という未来の姿を描き、そこに向かって30年後、10年後、5年後、3年後、1年後のビジョンを設定する。似鳥氏によれば、伸び悩む社員は総じて10年後の目標が小さいという。


ビジョンを達成するための手法とは


ニトリでは不可能に思えるビジョンを達成するための具体的な手法として ワークデザイン を採り入れている。これは「生涯設計キャリアシート」の会社版で、30年後の目標を掲げ、そこから10年、5年、3年と逆算して目標を設定し、最終は1週単位での目標を設定している。

これをさらに店、地域、商品ごとにも展開し、1週間単位での決算とも言える ウィークリーマネジメント を実施し、週毎に細かくビジョンの進捗状況を把握、管理している。変化の早い消費者相手の小売業ならではの手法と言える。

「ウィークリーマネジメント」では「観察」「分析」「判断」という手順で思考することを指導している。精神論は禁物で、科学と論理によって業務を進めることを基本にすることで、「改革の技術」が磨かれる。ニトリでは「改革」とは「制度対策」であり、応急措置である「改善」とは区別して位置づけている。

「改革」の例として「1:3の原則」がある。これは3倍になったら乗り物という手段を変えるというものだ。乗り物を変えた事例の一つとして商品の調達ルートがある。売上が拡大するに連れ、当初の問屋経由の仕入れから国内メーカーとの直接取引に変更し、さらに海外からの直輸入に切り替えた。






人事異動による人材育成


一方、人材育成の柱は 配転教育 だ。2年〜3年で部署異動を行い、様々な部署での仕事を経験することによる育成を基本にしている。

人材に求めるのは会社全体を見ることができ、なおかつ専門性を身につけることとされ、一芸に秀でたような人は求めていない。似鳥氏によれば、大きく成長するのは常に何かを吸収しようと貪欲な人であり、自分に興味のあることにしか目を向けない人は進歩しない。

「配転教育」で異動した社員に求められるのは前例を踏襲しないこと、つまり前任者のやり方を否定することだ。ニトリでは常に現状を否定することを追い求めている。先の「1:3の原則」で乗り物を変えるのもその一つだ。そのため社員にも配転先では現状を否定する仕事を求める。

「配転教育」は徹底していて、役員も最長5年で現場へ異動する。そして数年後、今度は本部へ「出向」する。あくまで籍は現場にあり、本部は出向先という位置づけだ。





「生涯設計キャリアップシート」を作成させ、「ウイークリーマネジメント」で思考を鍛え、「配転教育」を行って人材の育成を図っているニトリだか、優秀な指導者に育つのは10人に1人ぐらいで、9割の社員は変われないという。

もっとも、これは社内向けに甘く見積もって語っている話であり、実際はもっと多くの社員は変われない。だが似鳥氏は1%の成長して変わった社員で会社を動かすことができると言う。

ニトリでは変われないまま現状維持に転じた途端、降格が始まり、給料もダウンする。似鳥氏は挑戦しない人間は死んだのと同じであり、「棺桶人間」になってはいけないと言う。

企業が成長するためには社員が変わり続けることが必要である一方、社員の自己実現のためにニトリという会社が存在する。だから社員はトコトン会社を利用して自分を目一杯成長させて、世の中に貢献するのが生きがいに繋がる。

社員にとってニトリという会社は人生道場なのかもしれない。



似鳥昭雄・著「リーダーが育つ55の智慧」

リーダーが育つ55の智慧
似鳥昭雄・著 角川書店・刊 税別900円


2023/03/19


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