アイリスオーヤマ 経営の極意

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日本人の経営者や管理職が苦手なのが合理的な意思決定だ。頭では正しいとわかっていたり、筋道が通っていると思えても、決断できないケースがしばしばある。
その背後には、合理的な意思決定により組織の和が乱れるとか、年功や上下関係といった人間関係に摩擦が生じる、あるいは前例を覆すリスクを冒したくないなど、さまざまな思いが交錯し、決断を躊躇してしまう。この点については、合理的な判断をすることが当然視される欧米の経営者・マネージャーたちの方が有利と言える。
そうした中、日本人的なDNAを変えないまま、高い成長を続けているのがアイリスオーヤマだ。アイリスオーヤマと言えば、家電製品や収納家具、園芸用品、LED照明など消費者に身近な製品を開発・販売していて、自宅に同社の製品があるという人も多いだろう。
現会長の大山健太郎氏は19歳の時、病で倒れた父親が5年前に設立した会社の後を継いだ。当時は年商が500万円のプラスチック製品の製造下請け会社だった。試行錯誤しながら経営を続け、27歳の時には年商7億6000万円にまで規模を拡大させた。そうした時、オイルショックが起きて倒産寸前にまで追い込まれ、工場閉鎖と人員削減を余儀なくされた。
これを教訓に大山氏は、どんな環境でも利益を出す経営を目指すことにした。ピンチをチャンスにするのではなく、ピンチが必ず利益になる経営に転換を図った。「選択と集中」だけでは不透明な時代に命取りになるという判断のもと、生活用品というジャンルを選択し、その中で幅広い製品を展開するという「選択と分散」を基本に据えた。

大山健太郎氏
中核的に据えた2つの方針
この路線転換の中核的な方針が「ユーザーイン」と「メーカーベンダー」だ。
「ユーザーイン」とは、製品を使う人が役に立つと思うかどうか、あるいは安くて使い勝手が良いと感じるか否かなど、ユーザーが満足するかを中心に考える。「マーケットイン」が業界や市場の要望に応える戦略であるのに対し、「ユーザーイン」の中心ターゲットは製品を使うエンドユーザーにある。
そしてメーカーに問屋機能も併せ持ったのが「メーカーベンダー」だ。単なるメーカー直販に留まらず、品揃えや小口の受注発送業務にも対応する。アイリスオーヤマは「メーカーベンダー」に衣替えすることで、自らの手で需要と市場の両方を創造することが可能になった。
アイリスオーヤマは、この2つの方針に基づき、商品開発や市場創造、需要に対応する瞬発力、組織の力、計数管理力などを高めるために、様々な仕組みを作り出している。大山氏はアイリスオーヤマは「仕組み至上主義」の会社であり、仕組み化しなければ経営ではないと断言する。
結果が伴わないのは社員がやるべき事をやらないのではなく、仕組みが間違っているからである。仕組み化することで、「これは〇〇さんでないとできない」といったように仕事を属人化させずに済み、誰がやっても同じ結果がもたらされる。仕組みは合理的に構築されるから、日本人でも合理的な意思決定ができる。

仕組み化の具体例
アイリスオーヤマの仕組み化の一例をご紹介しよう。製品開発の仕組み化は、毎週月曜日に行われる「プレゼン会議」だ。製品の企画担当者だけでなく、製造、営業、生産管理など関係する部署の責任者が全員集まって、丸1日かけて約60件に及ぶ新製品の開発案件を話し合う。
アイリスオーヤマの製品開発は企画から開発、そして営業へといった順繰りに「リレー方式」で進めるのではなく、関係者全員が一緒に行う「伴走式」を採用している。経営陣と部門責任者の全員が集まり話し合うことで、同社が唱える「ユーザーイン」とは具体的にどういった目線を持つべきなのかが全員に浸透する。
もう一つの仕組み化の事例として「ICジャーナル」がある。これは生産現場の従業員以外の全員が毎日記す業務日報システムだ。単なる事実の列挙は厳禁で、各自が毎日の仕事の中でどんな事に気づいたか、これから何をどのように進めようとするつもりなのか、他社の動向についてどう思ったかなどを、直属の上司だけでなく、他部署の社員に向けて発信する現場レポートといった内容になっている。
この「ICジャーナル」は誰でも見れる上、特定の担当者や製品をフォローしたり検索する機能も備えている。「ICジャーナル」は現場と経営管理層の情報格差の解消を図るだけでなく、社員同士の情報共有も促進させている。また同じような悩みや課題を抱えた社員同士も情報を共有できる。
「プレゼン会議」と「ICジャーナル」によって、「ユーザーイン」という意識の浸透を図り、移ろいやすい消費者の声という情報に格差を生じさせないことで、全体のマネジメントを効果的に機能させている。
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ニューノーマル時代の経営
大山会長はニューノーマル時代のキーワードとして、次のような事項を指摘している。
①コロナ騒動で生じたネット通販の定着により、ユーザーが製品や企業に求めるのは共感度や信頼に移行している。会社はこれまでの業界という垣根を超えた存在に変わり、都市部と地方という垣根も崩壊する。
②世界経済がグローバル化からブロック化に変わることで、サプライチェーンは短縮化される。大企業では自国や自社で生産する内製化が進むため、中小企業は下請けから脱却し、自社製品を手掛けるべきである。
ちなみにアイリスオーヤマが最初に手掛けた自社製品は養殖用のブイだった。それまではガラス製だったが、自社の製造技術を使ってプラスチック製に変えた。
③ニューノーマルの時代環境で利益を上げるには、起業家精神を持つ改革者になる必要がある。起業家精神には以下に挙げる4つの資質が必要である。
- 構想力:何を目的とした会社なのか、どんな事業で世の中に貢献するのかを考える
- 説得力:事業の構想を社員と共有する
- 実践力:構想を実現させるための行動する力
- 結果責任:トップが責任を引き受ける覚悟

「いかなる時代環境でも利益を出す仕組み」
大山健太郎・著
2026/05/18
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