人事労務管理と人材マネジメントに関する情報発信

割増賃金の落とし穴


割増賃金の計算は何かと間違いが生じやすい。気づかないまま不払いや過払いとなっていることがある。今回は割増賃金を計算する際の間違えやすい「落とし穴」についてお送りする。

まず時間外労働の割増賃金が必要になるのは1日・8時間、1週間・40時間という法定の労働時間を超えた場合だ。例えば完全週休2日制で、1日の所定労働時間が7時間、1週の所定労働時間は35時間という会社があったとする。

この会社である日、1時間の残業があった場合、1日の労働時間は8時間の枠内に収まっており、1週間で見ても40時間を超えていない。そのため、この1時間は時間外労働ではなく、割増賃金は必要ない。会社の残業全てに割増賃金を払っていると過払いになることがある。

だたし、この事例では割増賃金は必要ないが1時間分の賃金は必要になる。月給制であっても、1時間分の賃金が必要になる点が理解されにくいこともあって、賃金未払いとなっている場合がある。






定額残業の落とし穴


時間外労働については、一定の時間数の時間外労働があったものとみなして、割増賃金分を定額の手当(残業見合い手当)にしたり、あらかじめ基本給に組み入れておく 定額残業制 を採用している会社もある。この場合、計算の前提にしている一定の時間数を超えた時間外労働が行われると、その超えた時間分は追加の割増賃金の支払いが必要になる。

また定額残業制では手当の額を全員同じにしていると、行政当局から割増賃金と認められないことがある。割増賃金を計算する際の基礎となる賃金は一人ひとり異なるので、計算の前提にしている時間外労働の時間は同じでも、割増賃金の額は異なるのが普通だ。行政当局が定額残業を認めないと、割増賃金を一切支払っていないことになり、過去に遡って割増賃金を支払うよう是正勧告を受ける恐れがある。


定額残業についての詳しい記事はこちら



休日出勤の落とし穴


休日労働の割増賃金は法定の休日に労働した場合に必要になり、法定外の休日出勤には適用されない。法定休日 とは労働基準法により「1週間に1日」または「4週間を通じて4日」と定められている。つまり月のうち4日~5日が法定の休日になる。

現在、月の休日は祝祭日も入れると6日以上ある会社が多いが、法定休日以外の休日に働いても休日労働の割増賃金は必要ない。しかし、休日労働の割増賃金は必要なくても、休日出勤することで1週間の労働時間が40時間を超えると、時間外労働の割増賃金が必要になる。

ここで、法定休日と法定外休日を区別するのが面倒、あるいは出来ないため、とにかく会社が休みの日に出勤したら休日労働という扱いにして割増賃金を35%で計算していると、時間外労働の計算モレが生じることになる。

こうした処理は、たとえ時間外労働時間の計算モレで25%の割増賃金が支払われなかったとしても、35%の割増賃金を支払っているためこれまでは問題はなかった。しかし、猶予措置が終わり時間外労働・60時間超えで50%の割増率が適用されるようになると、時間外労働時間の計算モレは15%の割増賃金の未払いになる可能性がある。




代休や振替休日にも落とし穴が


休日出勤の代償措置として代休 があるが、代休の場合、法定の休日に働くとその日は休日労働になり、35%の割増賃金が必要になる。この時、休日の労働に対して通常の賃金と割増賃金を一緒に支払う場合がある(基礎となる賃金×1.35)。こうした計算をした場合は、実際に代休を取得すると、この代休日・1日分の賃金を控除をしないと1日分の賃金が2重払いになる。

これとは違い、法定休日の労働については35%の割増賃金だけを払う処理もある(基礎となる賃金×0.35)。この場合、代休を取得できないままでいると、法定休日の1日分の賃金が未払いになってしまう。

休日出勤の代償措置としては 振替休日 もある。振替休日は休日労働が行われる前にあらかじめ別の日を休日に指定しておく。この振替によって法定の休日労働は通常の労働日となり、休日労働の割増賃金は必要なくなる。

そのため振替休日を行えば休日労働の割増賃金は必要ない、と思い込んでいると未払いが生じることがある。振替休日により新しく振り替えた休日が翌週以降にズレ込むと、そのズレ込んだ週の労働時間が40時間を超えてしまい、時間外労働の割増賃金が必要になるケースがある。


2015/1/25


【関連記事】休日出勤が残業になる法律の不思議





事務所新聞のヘッドラインへ
オフィス ジャスト アイのトップページへ


↑ PAGE TOP