人事労務管理と人材マネジメントに関する情報発信

多様な社員を活かす方法


ユニクロを展開するファーストリテイリングは、パートやアルバイトといった非正規雇用の従業員の正社員化を進めている。新たに正社員になる従業員は転勤がない 限定正社員 や、所定労働時間が短い 短時間正社員 になる。一方、東京三菱UFJの労働組合は契約社員でも希望すれば組合員になれるようにする。

このように現在の職場では、従来の正社員とは異なる労働条件・雇用形態で働く正社員が増えている。今後は各種の労働関係の法律改正が予定されており、社員の多様化はさらに進むことが予想される。

そんな折、日本生産性本部では これからの雇用処遇研究会 を設け、社員の多様性を活かす人事管理の基本的な考え方を公表したので、その内容を見てみよう。






これからの人事管理が向かう先


人事管理の進むべき方向としては、「社員の多様性を活かして、経営の高付加価値化・グローバル化に対応できる人材を確保・活用すること」とし、そのためには「多様性を活かす人事管理」と「多様化を統合する人事管理」が必要であるとしている。

「多様性を活かす人事管理」のためには、人材の採用や配置をこれまでのような社員の属性別(男女、年齢、総合職・一般職、新卒・中途採用など)や雇用形態別(正社員・契約社員・派遣社員など)によって区別するのではなく、シームレス化(=継ぎ目のない状態)を図る。

そのためには、仕事に求められる要件と社員の能力の「見える化」を図り、職務と職能の最適なマッチングを図ることが必要になる。そして、人材育成の方向性は、従来の階層別研修のような集団的・画一的な育成に加え、個別色を高めた能力開発支援と キャリア開発支援 (←次回詳述)が重要になると指摘している。

「多様化を統合する人事管理」が求められるのは、社員の仕事に対する価値観や働く意識が多様化すると、組織を目標に向かって統合することが困難になるためだ。

そこで必要になってくるのが、人材価値を重視することで組織に求心力を持たせようとする発想だ。





人材の価値を重視するには


人材価値には「現在価値」と「将来価値」があり、現在価値は「職務遂行の結果」で決まる短期的な価値のことを指す。この価値評価を担うのは、人事評価や目標管理、賃金・報酬制度といった「パフォーマンス・マネジメント」で、これまでの人事管理が重きを置いてきた部分だ。

一方、将来価値とは人材の長期的な価値であり、「職務遂行の過程」で求められる能力によって決まる。この価値を決める役割は、経営戦略や事業計画に必要な人材力を明確にして、従業員の能力や行動特性を明らかにし、両者の最適なマッチングを図る「人材マネジメント」が受け持つことになる。

これまで人事管理といえば、人事評価制度に象徴される「パフォーマンス・マネジメント」によって運用がなされてきた。いわば人事部門が制度という社内のインフラを作り、人材管理の司令塔の役割を果たしてきた。今後は「パフォーマンス・マネジメント」に加え、社員・一人ひとりが今の会社で働くことで自分の価値を見出し、それを活かせる「人材マネジメント」が加わることによって、多様な労働者を束ねた一体感・連帯感のある組織運営が可能になる。

そのためには、人事部門が担ってきた機能の一部を現場に委譲し、採用や評価、処遇、育成などについては現場の裁量の余地を広げることが望まれる。そして、人事部門や人事担当者には社内のコンサルタントとしての現場の支援と、社員一人ひとりのキャリア開発を支援する「キャリア・コンサルタント化」が求められることになる。

2015/2/14





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