人事労務管理と人材マネジメントに関する情報発信

降職と降格について



前回 触れた昇進・昇格の反対に当たるのが降職と降格だ。降職 とは昇進の逆で、部長が課長になるといったように組織上の役職が下がることを言う。降格 は人事上の処遇として、現在格付けされている等級を引き下げることを指す。降格の結果、降職となることもある。

降職や降格は懲戒処分として行われることもあるが、今回は人事評価による降格を取り上げる。

【関連ページ】昇進と昇格について






降格が用意されている会社は75%


人事の専門誌である「労政時報」の2010年の調査によれば、降格を規定として採用している企業は全体の56%ある。これに、法的に問題があるが、規定がないまま実態として降格が行われている11%を加えると、およそ3分の2の企業で降格が仕組みとして用意されていたり、実施されていることになる。

しかし、実際に降格が頻繁に実施されているかというと積極的、活発に行われているとは言い難い。その理由の一つとして、多くの会社で主流となっている 職能資格制度 の設計思想の影響が考えられる。

職能資格制度では社員の職務遂行能力(職能)を評価して、複数ある資格等級のいずれかに格付けするが、この職務遂行能力に蓄積性を認め、年数を経過するごとに職能は高まり、低下することがないとしている。だが現実には中高年社員を中心に、格付けと実際の職能のミスマッチが生じている。

その原因は、職能を評価できず、結果として年功序列的な昇格を行ってきたこと、そして、かつては成績優秀で昇格してきたが、昨今の経営環境の変化についていけず職能のミスマッチを起こしていること、この2つが考えられる。後者の場合、本人の職能は変わっていないが、技術革新やグローバル化、事業構造の転換などにより求められる職能が変わったため、結果として職能の相対的価値が低下し、衰退が生じている。

今後も仕事を取り巻く環境変化のスピードは増し、変化の度合いも大きくなることに加え、高年齢社員を継続雇用する要請も今以上に強まることが予想される。組織を活性化し、変化対応力を高め、経営目標を達成するには降格制度の導入と活用が欠かせなくなる。



降格制度を機能させるには


降格制度を機能させるには、人事の複線化に合わせて格付けの仕組みも複線化させることが望ましい。従来の職能資格制度では、社内のキャリアは一般職から始まり、一定の階層以上から管理職や専門職に分岐する複線型の人事制度になっている。だが、キャリアは複線化しても同じ格付け制度で処遇される。

これを一般職は従来通り、職能資格制度により格付けを行い、管理職や専門職といった階層からは職務や役割によって格付けを図るようにする。職務等級制度役割等級制度 では社員本人の人物評価をするのではなく、会社が求める仕事や役割の重要性、難易度、貢献度、職責の大きさや広さ、重さを評価する。該当する等級の職務や役割を担うことができると判断された社員は、年齢や性別、勤続年数、これまでの経歴を問わず、誰でも同じ待遇で処遇される。そのため、「同一労働・同一賃金」となる。

そして、一般職の職能資格制度では、降格がない代わりに昇格に上限を設定し、一定の階層で昇格を打ち止めにする。管理職や専門職階層に異動すれば、それ以上の昇進・昇格が可能になるようにする。昇格と降格は管理職・専門職階層内におけるタテ方向と、管理職・専門職階層と一般職階層との間のヨコ方向への異動で行われる。

降格を取り入れた等級イメージの図



制度運用の注意点


降格を実施する際は賃金ダウンを伴うため、就業規則や賃金規定を改定する必要がある。その際は、総額人件費は変えずに配分方法を変更するようにして、特定の部門や階層の社員が不利益を被るといった 不利益変更 が生じないような配慮が求められる。降格による賃金低下率は10%を超えると、就業規則を変更にあたっての合理性が裁判で否定される恐れが高まる。

制度の運用に際しては人事評価や降格制度の透明化、1年ぐらい前の事前予告、異議・苦情申し立て、早期の復活制度、降格者に対する研修教育の充実などを図る必要がある。

2014/12/19






事務所新聞のヘッドラインへ
オフィス ジャスト アイのトップページへ


↑ PAGE TOP