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決算書の見方・読み方 <損益計算書>


決算書の見方・読み方の第3回は損益計算書を取り上げる。

【前2回は以下の通り】
決算書の見方・読み方 第1回 概要編
決算書の見方・読み方 第2回 貸借対照表編


損益計算書はその名前の通り、会社の会計期間における「損(失)」と「(利)益」をまとめている。1年という期間に限っての結果のため、貸借対照表と違い1期ごとに数字が大きく変わる場合がある。規模の大きな顧客と取引を始めると売上が飛躍的に増えるし、逆に昨今のように資材や原材料価格の高騰で利益が急激に減ることもある。

実際の損益計算書を前回の貸借対照表の時と同じようにトヨタ自動車の決算書を使って見てみよう。以下は自動車部門についての損益計算書で、単位を100万分の1に縮小し、端数処理をしている。右端には別途、売上に対しての利益率を計算してみた。

<2019年4月1日~ 2020年3月31日>



損益計算書で示される3つの利益


損益計算書では3種類の利益が計上される。一つ目は売上高から売上原価を引いた 売上総利益 だ。売上原価とは売上を上げるために直接必要になる経費のことで、主なものは販売業であれば商品仕入額、製造業なら原材料購入費になる。なおトヨタのような製造業では生産に携わる社員の人件費は売上原価に入る。

売上総利益は「粗(あら)利」「粗利益」と呼ばれることもある。売上に比べ売上原価が低いと、売上総利益律は高くなり、付加価値が高いことになる。

売上総利益から、販売や営業、広告宣伝、事務管理などに要する「販売費および一般管理費」を引いたものが 営業利益 になる。営業利益は本業で稼ぐ力とされる。営業利益がマイナスということは本業で利益が出ていないことになるため、経営陣は何らかの手立てを講じる必要性に迫られる。



営業利益の赤字が続くと現金が不足していく


営業利益から通常の営業活動とは無縁のその期特有の利益や損失である「営業外損益」をプラス・マイナスしたものが 経常利益 になる。経常利益は1年間の会社の成績と言える。上場企業では営業利益が赤字の場合はさまざまな手立てを講じて営業外の利益を計上し、経常利益を黒字にすることがあるが、中小企業では営業外で利益を捻出するのが難しいため、営業利益で赤字になると経常利益も赤字になるケースが多い。





損益計算書では分からないこと


1年間の損益がまとまると、昨年に比べ売上と利益の関係が次の4つのいずれかに区分けされる。

  1. 売上・利益が共に増える「増収増益」
  2. 売上・利益が共に減少する「減収減益」
  3. 売上は上がったものの、利益が下がる「増収減益」
  4. 売上は下がったが利益は増えた「減収増益」


最も好ましいのが「増収増益」で、最も良くないのは「減収減益」であることは明らかだが、「増収減益」と「減収増益」のどちらが良いかは一概に決められない。会社の規模や置かれた現状、将来を見通した経営方針などによって異なる。会社の規模が小さく成長余地が大きい状況であれば、利益よりも売上げが重視されることもある。ある程度の成熟した商品・サービス、業界であれば売上よりも利益が重視される。

損益計算書からは会社の1年間の成績がわかるが、見えてこない事柄もある。一つはどれだけ効率よく資産を使って利益を上げているかという指標の一つの「回転率」だ。同じ利益を上げている2つの会社でも、使っている資本金や在庫=棚卸商品高が少ないほど資本回転率や在庫回転率が高くなり、効率良く資産を使っていることになる。回転率が高いと元手のおカネが素早くモノやサービスに代わり、それらを短期間で販売提供し、資金を回収していることになる。このため必要になる運転資金が少なくて済む。こうした「回転率」は貸借対照表を見ないと分からない。

もう一つはおカネの流れだ。一般的には売上が上がれば現金が増えるが、時には売掛金や棚卸商品という資産が増えて現金が増えないケースもある。だが損益計算書ではこうした資金の動きがわからない。また金融機関への支払利息は損益計算書の「営業外損益」で示されるものの、元本の返済額は載ってこない。そのため金融機関からの借入金がどれくらい増加したのか、減少したのかもわからない。

つまり損益計算書の上ではいくら利益が出ていても、手元の資金が減ることもある。こうした状況はしばしば「勘定合って銭足らず」と称される。おカネの流れに注目して作成されるものとしては「キャッシュフロー計算書」があるが、中小企業には作成義務は課されていない。


2022/05/16


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